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第14話 完璧

「……あれ?」 帰宅するなり、安藤はベッドに押し倒されて仁に見下ろされていた。 仁は笑顔だが、少し頬が紅潮しており安藤の手首を握る手にも僅かに力が籠っている。 ――興奮している、とすぐに分かった。 「やっぱり俺、我慢できないや。優介さん、映画より先にセックスしよう?」 「え、ちょまっ……ンッ、ン――……」 安藤は拒否するつもりはないが、せめてシャワーを浴びさせてくれと頼みたかった。が、舌を使った深いキスをされて直接肌を撫でられれば、それだけで制止の言葉は頭の片隅に置き去りにされ、仁が服を脱がしやすいようにキスをしたまま身体を捻らせるのだった。 * 「ハア……優介さん、ほんとかわいい」 仁は安藤の顔中にチュ、チュと軽いキスを落としながら言う。 下半身は既に結合しており、グチュリグチュリと卑猥な音を安藤の寝室に響かせている。 仁はキスをしながら緩く腰を前後に動かし、可愛いと言うたびに分身をきつく締めつける安藤の表情を伺っていた。 「はあ……はあ、仁、んぅ……ッ、あ……!」 「俺に抱かれて女の子みたいになっちゃうの、ホントにかわいい……ねえ、きもちいい?」 「あ、あ、きもちいぃっ……!」 安藤としては仁に『可愛い』と言われるたび、自分のようなどこにでもいる男のどこが可愛いのだろうと一瞬考えてしまうが、仁の今にも蕩けそうな甘い視線を真正面から受け止めると、そんなことはどうでもよくなってしまう。 女の子のようだと言われても腹は立たない。 実にその言葉通り、安藤は最初の夜から、仁には女の子にしてもらうために抱かれているので――。 「かわいい、かわいい、優介さん、好きだよ……!ね、優介さんも、俺のコト好き?」 「あん!あっ!すき、仁が好きだ……!あぁっ!も、イく……ッ!!」 「くっ……俺も出す、よっ!」 安藤が先に仁の腹に精液を飛ばし、仁はその後も数回安藤のナカに激しく擦り付けたあと、そのままコンドーム越しに精液を吐き出した。 「はーっ、はーっ、……ああ……あっつい……」 「ん……ちょっとエアコン効きすぎてる感じ?」 仁の下で暑いと文句を言いながらも、安藤は仁の背中に腕を回したまま離れようとしない。 「優介さん、水飲む?」 「いや……このまま、もういっかいシて……?」 安藤は最初は『待って』なんて言おうとしていた癖に、いつの間にか自分のほうが仁を求めてしまっている。 「ん、了解。えっちで可愛いなあ、優介さん」 「ンッ」 それでも仁は嫌な顔ひとつせず、安藤の言う通りにしてくれる。 (どうして仁は、こんなに優しいんだろう……) いつも安藤の望むとおりに、優しく、時には激しく抱いてくれる。 会いたいと言ったらすぐに会ってくれるし、会えない日でも朝夕の通話アプリのメッセージは欠かさない。 いつでも髪や身なりはきちんと整えていて、相手に不快感を感じさせない(仁ならだらしない格好をしていても、きっとかっこいいと安藤は思うのだけど) 金銭関係は少し甘えてきたりなど、年上の安藤を立てることも心得ている。 ――完璧すぎる恋人だ。 少し、不安を覚えるほどに。 (俺はいつ、仁にワガママを言ってもらえるんだろう?というか、仁には思い切りワガママを言える相手はいるんだろうか……?) 「っ俺に抱かれながら、考えごととか余裕だね?優介さん!」 「違っ……!あ、あああッ!!そこだめ!あんッ、~~っ!!」 激しく揺さぶられながら同時に弱い乳首を弄られて、いつの間にか安藤の中にぼんやりと浮かんでいた些細な不安は彼方へと消えていった。

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