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第17話 遭遇

 マンションからコンビニに行く途中、道路工事をやっていた。 (ええー、コンビニはこの通りにあるのに。ま、仕方ないか)  歩道は確保してあるのでわざわざ向かい側に渡る必要はないのだが、なんとなく工事現場に近寄りたくなくて結子は横断歩道を渡った。   渡りながら工事をしている作業員の方にちらりと目をやると、一人だけ背が高いモデルのような男がいたので思わず目を見張った。 (あんなイケメンが道路工事!? なんか勿体ないわね。って、どっかで見たことがあるような……?)  結子の視線に気が付いたのか、男は顔を上げて自分をじろじろと無遠慮に見つめてくる女を少し顔をしかめながら見つめ返し、そして驚いたように目を大きく開いた。 それは、結子も同じだった。 「「あ!!」」  思わず叫んだのも、ほぼ同時だった。 * 「ひっ、久しぶり……ですね、高崎さん」 「すいません、俺、貴方の名前覚えてなくて」 「……佐野です」 「どうも、佐野さん」  何故こんなことになっているのだろう。  思わずお互いを認識した途端に叫んでしまい、そしたら高崎の上司らしいおっさんが余計な気をきかせて『おまえのコレか? よし、少し休憩してこい』と彼は背中を押され、仕方がないのでこうして近くの公園のベンチに二人して腰を降ろしているのだった。 「今日平日ですけど、佐野さんは仕事じゃないんですか?」 「体調不良で休んだんです」 「そうですか、外に出て大丈夫なんですか?」 「別にコンビニ行くくらいいいでしょ、一人暮らしなんだから!」  まるで攻めるような物言いに少し苛ついて、つい強い口調で反論してしまい、結子はハッとして高崎の顔を見た。 「あっ……ごめんなさい。つい」 「いえ。俺も一週間前に失礼な態度取りましたし、おあいこです。その節はすいませんでした」 「あ、いえっ……こっちこそ、2人で楽しんでいるところを邪魔しようとして……」  そう下手に出て来られては、こちらも素直に謝らざるを得ない。  すると高崎は結子に微笑みかけてきて、思わずドッキンコと心臓が飛び跳ねた。 (う、うっわぁ~! 間近で見るイケメンの笑顔、破壊力強すぎでしょ……!!) 「佐野さんは優介さんの部下なんですよね。優介さん、会社ではどんな感じなんですか」 「え? えっと……安藤課長は仕事も出来るし部下にも優しいですけど、人がいいから上から無茶な頼まれ事をされても断れなくて、ちょっと要領が悪いっていうか……あ、別に悪口じゃないですからね!? 本人に言わないでくださいよ!」 「どうだか、今度会った時にチクってやろうかな~」 「もう、やめてくださいっ」  勿論、高崎の口調から冗談だということは分かっているのだが。  そして結子は、気になっていたことを聞いた。 「……あの、課長とはどうやって友達になったんですか? 結構歳離れてますよね……?」 「はい、6つ離れてます」 「6つ!? やだ、きみ私より年下じゃん!」 「はい、だから俺佐野さんには敬語を使ってるでしょう?」 「んなっ」 (最初から私が年上って分かってたんかい! くそ、やっぱり性格悪いわこのイケメン!)  高崎は年下のくせに(年下だからだろうか?)生意気でムカつくけれど、なまじ顔が良いせいか何を言っても許せてしまう感じがした。 (さっきから何ドキドキしてんだ私! 私には安藤課長がいるっていうのに!)  目の前にいる男がその安藤の恋人なのだが、結子には知るよしもない。 「会ったときはお互い年齢なんて言わなかったし、上司でも部下でもないから自然に友達になりましたよ」 「そ、そーなんだ。で、貴方といるときの課長はどんな感じなのよ?」 「可愛いですよ、とても」 「かわっ……年上の男にそれはどうなの!? まあ、確かに課長は可愛いけどぉ……」  安藤は少し天然なところがあるので、そういうところを言っているのだろう。  しかし、絶対に自分の方が安藤と知り合ってから長いと思うのに、高崎の方が素の安藤を知っているのだと思うとなんだか嫉妬してしまう。

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