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オメガ同士

王子様ってやっぱりすごい……。 こんなキレイな人が側にいるのに何でわざわざ僕? 代わりにもならない。 全てが違う。 銀色の毛並みもすらりと伸びた手足も整った目鼻立ちも自信に満ちた強い瞳も……。 何一つ僕は持っていない。 ティオフィルさんが立ち上がり手を引いて起こしてくれて、またマントに覆われた。 「……もう良いだろう。早く休ませてやりたいんだ」 「そうは言ってもお前には誘拐団の事をいろいろ報告して貰わないといけないし……その子も被害者の1人なら話を聞かないと……」 誘拐団?被害者? 僕…誘拐されてたの? 「ティオフィルさん……」 自分の置かれている状況が分からず、不安にティオフィルさんの服を掴む。 「マリユス……今は止めろ……」 「了解……随分とまぁ……だが取り敢えず報告は必要だ。君たちにはこのまま城内には残ってもらうよ」 僕は……どうなるんだろう。 何も疑わずティオフィルさんについて来たけど……。 誘拐って何? ティオフィルさんが誘拐団? 男の人から助けてくれたのに? でもいま頼るのはティオフィルさんしかいない。 混乱する僕の耳に、ふっと空気を変える様な柔らかい声が届いた。 「他の子供達は保護施設へ移動しております。マシロさんは私がお預かり致しましょう」 ……?誰? 「マシロさんティオフィルさんのお仕事が終わるまで一緒に待っていましょう」 マントの向こうから声をかけられる。 恐る恐る顔を覗かせると王子様がしゃがんでこちらを見上げて微笑んでいた。 「マリユス王子?声……違う?」 「マリユス王子はあちらです。私はリンドールと申します。よろしくお願い致します。マシロさん」 柔らかな声に差し伸べられた手に無意識に手を伸ばしていた。 「く……オメガ同士なら……でも…しかし他には……う〜ん……よろしくお願いします。リンドール様」 ティオフィルさんに背中を押されてリンドールさんの横に立つ。 ティオフィルさんのマントを引っ張るとティオフィルさんは微笑んでマントを外して僕の頭から掛けてくれた。 「俺の大切な番をあまり人目に晒したくないからな」 折り曲げてマントの丈を合わせてくれると、マントに隠れた頬にそっと唇が触れた。 「すぐに迎えに行くから……待っててね」 マリユス王子と歩いて行ったティオフィルさんを見送るとリンドールさんについて歩き始めた。 マント……リンドールさんの横に並びたくないと思ったの……分かったのかな? この傷……お母さんの事、忘れない為の大切なものだから……気にしないって決めたのに……。 ティオフィルさんに会ってから……自分の醜さが気になってしまう。 ガリガリの体も、斑模様で切り取られた耳と尻尾も、顔や体についた傷も……ティオフィルさんに見られたくない……。 「……ぅぶ!!」 ぼんやり考え事をしていたせいで立ち止まったリンドールさんにぶつかってしまった。 「ごめんなさい……」 「ティオフィルさんと離れたのがそんなに不安ですか?どうぞ……私の部屋なので誰も来ませんからゆっくりして下さい」 ぶつかったのに怒らずにクスクス笑ってる。 優しい人。 ……部屋? 僕の家より広い……。 大きなフカフカの椅子に座る様に促されて腰を下ろすと目の前にキレイな柄のカップが置かれた。 「お菓子も好きな物を食べて下さいね」 煌びやかな色とりどりのお菓子たち。 戸惑っていると、お皿に取り分け渡されて、おずおずと口に入れた。 味は分からなかったけど……。 「お……美味しいです。ありがとうございます」 食べ終わるとリンドールさんが嬉しそうに微笑んでくれる。 「早くいっぱい食べれる様になるといいですね」 ………。 「あの……リンドールさんは……オメガですか……?」 「そうですよ。オメガ同士ですからなんでも相談して下さいね」 ティオフィルさんの知り合いならきっといい人……だよね? ならあの街で聞いた事も話していいのかな……。 「オメガ同士……やっぱり僕はオメガ?……どうやって子供産むか知ってますか?」 「……何でもと言いましたが、随分直球ですね……」 ちょっと呆れ顔……。 子供産む方法知らないの……やっぱり僕がバカだから……。 「ティオフィルさん……僕を運命だって。早くティオフィルさんの子供産まないと……折角優しくしてくれてるのに……がっかりさせちゃう……」 「早く子供を産めと……ティオフィルさんがそう言ったのですか……?」 あれ?なんか空気が凍ったような……。 顔を上げると……リンドールさんの目が凄くつり上がってる。 「あ……いえ…アルファの子を産むだけがオメガの運命なんだって……聞いて……その……」 どうしよう……リンドールさんすごく怒ってる。 ……聞いちゃいけない事だった……? 「マシロさん……この部屋から絶対出ないで下さいね……」 そう言うとリンドールさんは部屋から出て行ってしまった。 どうしよう……僕、駄目なこと言っちゃった? ドクン…ドクンと胸が苦しい。 喉が………圧迫されて……息苦しい。

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