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初めての感覚

今日は王子様と庭に立っています。 ティオフィルさんはリンドールさんとお話があるらしく庭で別れた。 ………けど。 離れていったティオフィルさんの腕にしがみつくオメガの女の人……ティオフィルさんもにこやかに何かを話している。 胸が……チクチクする。 「マシロ?……あぁ……彼女の事、気になる?」 「…………王子様……行きましょう?」 何だか見ていられなくて王子様の手を取った。 「マシロだから特別だよ」 そう言って王子様の自室に入れてくれた。 「その服を着ていると昔のリンドールを見ている様だね」 「………………」 あの女の人も……キレイだったなぁ。 やっぱりお城に住む人達はみんなキレイ。 何だか場違いな気がして耳をギュッと引っ張った。 「そんなに強く引っ張ると毛が抜けてしまうよ?そんな泣きそうな顔をしないで……」 王子様が口の中に何かを押し込んできた。 「???」 「異国のお菓子だよ。とっても甘いでしょ?元気出して?」 「……はい」 王子様の優しさに笑顔を作って返した。 折角王子様が一緒にいてくれるのに暗い顔はダメだよね。 「マシロの為にティオの大好きな絵本を読んであげるね」 ティオフィルさんの好きな絵本。 そう言えば僕、ティオフィルさんの好きなもの何も知らない。 王子様は本を開いてゆっくりとした口調で聞かせてくれた。 「昔……」 ――――――――――――――― この世界が熾烈な領地争いで地塗られていた時代。 一人の特級種のアルファが戦地に降り立った。 疾風迅雷の進撃に誰も敵うものはいなかった。 全ての国を撃ち取り、アルファは国を作った。 アルファの願いはただひとつ、愛する番のオメガが安心して暮らせる国を作ること。 アルファは良く国を治め、オメガもアルファを支えた。 そんなアルファを良く思わない者も多くいた。 統治以前に私腹を肥やしていた者達だ。 悪を許さなかったアルファが邪魔だった。 アルファには敵わないと……オメガを狙った。 オメガを人質にアルファを討とうとした男達の前でオメガは自害した。 それを知ったアルファは怒り狂い。 炎で世界を焼き、水で世界を流し、風で世界を吹き飛ばし、雷の雨を降らせた。 全てを洗い流したアルファはオメガの亡骸を地に埋めた。 その場所で……アルファは大きな樹へと姿を変えた。 番を守るように……もう二度と誰の手にも触れさせないように……。 長い年月が経ち……アルファの樹は森の中に飲み込まれた。 生き延びた人々は帝国を再建した。 アルファの怒りを恐れ、アルファの意思を継ぐように全てのオメガを守った。 アルファの樹があるとも知らずに森に入った男がいた。 男は半狂乱になりながら森から出てきた。 男は……腕を失っていた。 その後……何人かの人が森に入ったが……五体満足に戻って来たものはいなかった。 ある日、親の為に薬草を採っていたオメガの少女が盗賊に追われ森に逃げ込んだ。 少女を追った男達はある者は腕を失い、ある者は足を失い、またある者は命を失った。 少女だけが無傷で森から帰って来た。 オメガでは持つことの無い治癒の魔法を得て。 少女は魔法で親を治癒し、幸せに暮らした。 少女は森の奥には賢者様がいて、森に入った者の罪を裁き、罪なき者は望みを叶えて貰えると証言した。 それ以来、その森は『賢者の森』と呼ばれ恐れられる事となった。 ――――――――――――――――― ティオフィルさんの好きな絵本と言うので楽しみにしてたのに……。 王子様の腕にしがみついた。 「マシロ?大丈夫かい?」 「………怖いです」 「怖い……。アルファとオメガの差かなぁ?俺とティオは憧れるんだよね……ここまで番を愛して番の為に全てを投げ出せる事に……」 王子様は本当に憧れているのか、上を見上げて微笑んでいる。 「自分のせいで……好きな人を化け物にしてしまうなんて……怖い」 王子様の腕に更に強くしがみつくと頭を撫でられた。 「リンドールは……怒ってたなぁ……アルファはバカなのかって……」 王子様の優しい声も耳に入らない位、今聞いた絵本の内容が心を締め付けた。 ティオフィルさんは……化け物になんて……ならないよね。 いつも笑顔の優しいティオフィルさんの姿を思い出して恐怖心を追い出した。 迎えに来てくれたティオフィルさんと手を繋いで帰る。 「マシロ?元気無いけど……マリユスに何か言われた?」 頭を横に振る。 「読んで貰った本が怖すぎて……」 「本?……大丈夫だ。俺がしっかりマシロの手を握ってる。マシロを守ってやる」 「ティオフィルさん……」 繋いだ手に力が込められて、ティオフィルさんを見上げた。 ……あれ? いつも通りのティオフィルさんなのに……いつも見てるのに……。 何だか……胸が熱い……体が……熱い……。 呼吸も荒くなり、足から力が抜けて、その場にしゃがみこんだ。 「マシロ!?どうし………っ!?」 ティオフィルさんが慌てて鼻を塞ぐ。 「この匂い……まさか……!?」 「ティオフィル……さん……何か……変」 ティオフィルさんを見上げたとたん、抱き上げられてティオフィルさんが走る。 抱きついてティオフィルさんの熱が、更に僕の体を燃やしていく。 家に着くなり2階の寝室に運ばれた。 「マシロ……絶対無理はさせないから!!優しくするからっ!!」 切羽つまったティオフィルさんの顔……。 何だろう……ティオフィルさんを見てると……スゴく……スゴく…… 「……好き」 ティオフィルさんの首に抱きついた。 ベッドの上に寝かせられて、ティオフィルさんがキスしてくれる。舌が口の中に入ってきて……気持ち……良い……。 僕も同じようにティオフィルさんの口の中へ舌を差し込むと……尖った歯に舌が当たる。 キスに夢中になっている間にいつの間にか服を脱がされていて、ティオフィルさんの大きな手が身体中を撫でて……お尻の割れ目をなぞられる。 後ろの穴にティオフィルさんの指が触れる。 わかった……これはリンドールさんに教えて貰った、愛し合う行為って奴だ……。 あれ……でもこれって……前に………。 ティオフィルさんの指がお尻に差し込まれて、指を動かされる度に水っぽい音がする。 ティオフィルさんの長い指が中を擦っていく度に何も考えられなくなっていく……。 指が抜かれ、四つん這いにされた背後からティオフィルさんが覆い被さってきて……お尻に何かをあてられた。 やっぱりあの時と一緒! 痛みを思い出して体が緊張に固まった。 「マシロ……大丈夫だから……力を抜いて……」 ティオフィルさんの言葉に緊張が解れ……胸がドキドキうるさくなる。 ゆっくり……ゆっくりと……確かめるように硬いモノが入ってくる……。 あの男の人の時はあんなに痛かったのに……ティオフィルさんやっぱりスゴいや……。 ティオフィルさんのモノでいっぱいになっていく……。 「ティオフィルさん……これで……僕はティオフィルさんのものになれた?」 ティオフィルさんの顔が見たい……と、後ろを振り返った時、僕の中でティオフィルさんのモノが震えた。 「……………」 ティオフィルさんが喋ってくれない。 リンドールさんに教えて貰った、愛し合う行為をしたのに……。 逆に愛が無くなっちゃった?僕、何か間違えた? ティオフィルさんは泣きそうな顔で僕の頭を撫でてくれる。 「ごめんね……マシロ……満足させてやれなくて」 満足って? ……わかんないけど嫌われた訳では無さそう。 「……ティオフィルさんに触って貰うの気持ち良かったです……また僕がおかしくなったら……触ってくれますか?」 ギュッと抱き締めてくれて暖かい温もりに包まれ……スゴく幸せな気分に包まれて眠ることが出来た。 ………お母さん。 見つけたよ……僕だけの人。 ―――――――――――――――――― 「マシロさん?今日はとても機嫌が良さそうですね」 尻尾が止まらなくてリンドールさんにも気づかれてしまった。 「あのね……ティオフィルさんにいっぱい愛を貰ったんです」 リンドールさんが僕の肩口に顔を寄せて匂いを嗅いで笑顔になった。 「良かったですね……今日はベッドで休んでおきますか?体、辛いでしょう?」 「???辛くないですよ?」 むしろ調子が良い。 「え……でも……初めてだったんですよね?痛かったでしょう?……ティオフィルさん体力ありそうですし……寝かせてもらえなかったんじゃ無いですか?」 「?痛くなかったし、すぐ終わりましたよ?」 目を真ん丸にしたリンドールさん。 痛くて長いのが普通なのかな? 「………………」 「???」 「マシロさん……ティオフィルさんの名誉の為に人には言ってはいけませんよ」 「え……?はい」 言うも何も僕が会話した事があるのはリンドールさんと王子様とハンソンさんだけだけど……。 ティオフィルさんの為なら黙っていよう。

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