15 / 34

第14話 告白とキスと……。

 大学のカフェテリアで雫は新一と香とともにいても携帯の画面ばかりを気にしていた。和樹からの連絡がおるかもしれないと思っているからだ。あれから毎日アルバイトの後、時間を作って雫を車で家まで送ってくれるようになって1週間が経っていた。その時、和樹は優しいキスも忘れない。考えるだけで頬が熱くなる。 「雫、お前最近良い事あっただろ?」  新一が突然話し出す。まるでこのタイミングを待っていたようだった。 「え、どうして?」 「どうしてじゃねえ、さっさと答えろ」 「新ちゃんそんな風に言ったら余計に雫くん言えないよ~」 「香は黙ってろ」 「はぁ~い」  香はカフェラテを飲みながら新一に従った。香の思いを新一が伝えてくれることが分かっていたかから。 「雫のそんな顔、俺は見たことが無いって言えば分かるか」 「新一……」  雫をよく知る新一たちには黙っておけないと判断して和樹の事を話すことに決めた。それが友達として最後の時間になるしても正直でいたかった。 「……好きな人ができたんだそれで」 「友長さんか?」 「え、なんで新一?」 「俺たちに分からないとでも思ってたのか?香はともかく、俺とは何年の付き合いになると思ってるんだ」 「そっか、そうだよね。うん。新一、僕は和樹さんが好きだよ」 「そうか、それであれだ、友長さんには告白したのか?」 「うん。受け入れてもらった。」 「ふう~。良かったな雫、それが聞けて安心だ」 「本当に良かったね雫くん」  2人の表情に嫌悪が浮かんでいないことが雫は嬉しかった。受け入れてもらえると信じてはいても心配だった。 「気持ち悪くない?」  うなずき合う2人に雫は聞かずにはいられない。普通では認めてもらえる関係ではないと理解しているからこそ聞きたかった。 「そんな訳あるか、お前はお前、誰を好きになって付き合っても俺たちは変わらない。なっ!香」 「そうよー、雫くん。私たちはいつでも雫くんの味方だよ」  その2人の言葉に雫は涙が出そうになった。新一と香の友達で心から良かったと思った。  新一たちに認められた雫はアルバイトの後に迎えに来てくれている和樹が待つコインパーキングに急いだ。姿が見えると思わず抱きついてしまった。眼鏡はすでに外されている。そんな雫を危うげなく受け止めた和樹は驚きながらも笑顔で見下ろす。 「何か良いことあったのか?」 「はい。新一たちに話したら祝福されました」  輝く笑顔の雫に和樹は嬉しそうに眼を細めた。雫の喜びは和樹の喜びだった。   「冷えるから車に乗ろう」  和樹は雫を助手席にいつものように促した。こういう所はいつでもスマートで雫はうっとりしてしまう。扉を開けられて助手席に雫が座るのを確認すると扉を閉めてくれる。乗り込んで来た和樹は真っ先に雫を抱き寄せその薫りを嗅ぐように1つ呼吸をする。 「匂い嗅がないでください、和樹さん」 「無理。良かったな。雫」  雫を抱きしめて離してくれない和樹の背中に腕を回しながら雫はうなずいていた。 「キスして良いか?」 「聞かないで下さい……。して欲しいです」  いったん身体を離して和樹の顔が近づき唇が塞がれた。はじめは啄むように徐々に和樹の舌が雫の唇をノックして、薄く唇を開くとゆっくりと和樹の舌が雫の口のかなに入って来る。舌が絡まり和樹の舌は雫の歯列をなぞり口の中を堪能すると雫の息が上がる。唇が離れるとお互いの唾液がつながり切れた。2人に熱い吐息がこぼれた。初めての深いキスに雫の頬はいつにもまして赤面してしまう。 「送るよ」  なごりおしそうに1度雫の頬に口づけを落として和樹は身体を前に向けた。雫も発進に備えてシートベルトを締め、車が走り出すのを恥ずかしげ顔を俯けて待っていた。  雫のアパートの前に車が着くと和樹はシートベルトを外して雫の方に身を傾け、雫もそれに答えるように顔を向けた。チュッチュと優しく啄むキスがされ離れて行く。雫は堪らずに和樹の左腕を握っていた。(どうして?)そんな思いも込めていた。  雫に聞こえないかのギリギリの小声で、「今日はこのままじゃ止めてやれなくなる」と和樹は呟いていた。 「何か言いましたか?」 「イヤ、何も。今日はここまでだよ雫」  その言葉に雫の頬に赤みが差す。和樹の右手が雫の髪をいじり頬を撫でた。そうして雫はその日、和樹の車を見送った。 1日の全てが終わり、ベットの中に潜り込んだ雫は今日のキスを思い出していた。 (あんなキスこの1週間で初めてだった)  手で唇をなぞるとより一層にリアルに情景を思い出す。唇から感じる熱に、動き回る舌に、身体は熱くしびれていた。  その時を思い出していた雫の下半身ははしたなく反応し、熱が集まり男としての象徴が主張を始めた。  今までは朝の生理現象を処理することでしか使われること無かったモノは熱を持ち、たまらない雫は手を伸ばしていた。布越しにも完全に勃起していて、雫の口から熱い吐息が生まれる。 恐る恐る下着の中に手を伸ばし自身を握りしめるとそれは先走りに濡れていた。和樹のキスを思い出しながら夢中で自分の半身を擦り熱を吐き出し瞬間、唇から「和樹さん!」と名を呼び果てていた。 (なんてことを僕は・・・)  処理を終えて冷静になった雫は己のはしたなさに入れる穴があれば入りたい心境だった。  そんなことを考えながら雫の夜は更けていく。僕はいやらしい生き物になってしまったんだ。そんな考えに囚われた雫は夜明け近くまで寝付く事が出来なかった。

ともだちにシェアしよう!