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第16話 初めての夜

 2度目に訪れた和樹の部屋を雫には見る余裕は無かった。食事の時も車の中でも緊張で話せず、車の中で自然な仕草で右手を握ってくれた和樹の手を握り返すので精一杯だった。 「雫、お風呂に行っておいで」  雫は手足が一緒に出てしまいそうで緊張でどこまでもぎこちない。俯いて着替えを持ってバスルームに向かった。お風呂から出ると着替えの上にバスローブが置かれていて真っ赤になる。こんな風にスマートに用意してくれる和樹にドキドキして、そしてその後にバスルームでしばらく1人であたふたしている雫がいた。  雫は和樹の為に特注されたベットの上で正座をして和樹が来てくれるのを待っていた。そして、扉を開けて入って来た和樹は雫と同じバスローブを着ているとは思えない位似合っていた。 「雫?」 「ひゃう!」 「大丈夫か?」 「は、は、はぃ!」  一歩ずつ近づく和樹に雫の心臓は爆発しそうだった。ベットに乗り上がり、雫の前まで来た和樹は膝立ちになって両頬に手を当てて額にキスをした。 「無理してるんじゃないか?」 「だ、大丈夫です」  雫の目線は恥ずかしくて瞳は見つめられないが、ドキドキしつつも1度決めた決心だけは揺らがなかった。  雫の決心をしっかり受け取った和樹は優しいキスから始めた。 「口を開けて?」  啄むキスから深いキスへと移って行く。雫は呼吸を止めてキスをしていたが、耐えきれず口を離してしまう。そして深い深呼吸を繰り返した。 「はぁぁ、無理~」 「雫、鼻で息をするんだよ」 「んぅ……」  和樹は雫からいったん離れ言葉を掛けるとよりキスを深くしていく。飲み込めない唾液が雫の口の端を流れ出て行く。それを1度舐めた和樹は荒い呼吸を繰り返す雫が落ち着くまで頬や額にキスの雨を降らせた。自然な仕草で雫の頭を支え横たわらせた和樹は覆い被さり、優しく右手で髪を梳いた。まるで母親が子どもを落ち着かせるような仕草だった。  どこまでも優しく見つめる瞳に雫の呼吸も落ち着きを取り戻し、和樹の胸に顔を埋めた。 「続きをしても良いか?」  首を縦に何度も振る雫のつむじにキスを落としながら和樹の手は肩を意図をもって撫でていた。そしてあらわになる首に顔を寄せ、徐々に唇を滑らせ鎖骨のあたりの肌にきつく吸い付き、キスの花びらを咲かせた。その両手も身体をなぞっていた。 「あっ……んんぅ……あっ」  雫の唇からは熱い吐息が溢れていた。それはとても艶があり和樹の下半身を刺激した。   「雫、脱がせるよ?」  和樹が器用にバスローブを雫から脱がせるとそこには生まれたままの姿の雫がおり、雫の半身はすでに兆していた。悩んだ末に何も着ないでバスローブを着ることを雫は選んだのだ。その姿に和樹の半身はより堅く熱を持ち、心には雫に優しくしたいという思いでいっぱいになった。 「雫、綺麗だ……」 「和樹さん……」  和樹を見つめる雫の瞳は熱く潤んでいた。再び顔を寄せてキスをする和樹を今度は雫もたやすく受け止め、キスに夢中になった。飲み込めないお互いの唾液は雫の頬を伝い落ち、それがお互いに深い興奮を呼んだ。  和樹はゆっくりと雫の身体に唇でキスを落としながら平らな胸にキスをし、可愛いピンクの粒に吸い付いた。 「あっ和樹さん……」  雫は反射的に起き上がり和樹が自分の胸に吸い付く様を見てしまう。 「駄目、そこ……変、うん、あっ……」    雫は右手の甲を口に当ててシーツに頭を擦り付けた。左手は和樹の肩を強くつかんでいた。胸が感じる事に雫は怯えた。こぼれそうになる声を聞かれたくなかった。 「声を聞かせて」  顔を上げた和樹は雫の口から手をどけると、左手で恋人繋ぎで顔の横に雫の手を縫い付けた。イヤイヤと首を振る雫の顔をのぞき込んだ和樹は右手を雫の頬に当て再び口を開いた。 「怖くないよ?雫」 「だって、僕……変……」 「変じゃないんだよ。ここは男も感じるんだ。俺に身を委ねて?」  雫は和樹の瞳を見つめた。そこにはただ優しさだけが溢れていた。 「……はい」  雫は頷くとキスを求めた。その要望に応えて和樹は再び胸への愛撫に戻っていった。左の粒を優しく舌で転がして、右手で雫の脇を撫で、そのまま手は雫の半身にたどり着いた。 「あ。ああ。はぁ~、いや、ダメ、和樹さん……」  雫の半身はすでに高まり先走りに濡れていた。おびえる雫が右手を強く握ると和樹も握りかえしてくれ、2カ所を同時に責められた雫はあっけなく熱を吐き出した。  和樹は濡れた手を持ち込んでいたタオルで拭くとゆっくりと右手をほどいた。荒い呼吸を繰り返す雫に1度口づけを落としてから下半身へと和樹は移動していき雫の足を広げていった。右足を膝を立てるようにした和樹はその柔らかい肌に口を寄せそこにキスを落とした。 「あああ、和樹さん……」  雫の両手はシーツを握りしめた。  腰の下に枕を入れられた雫の腰は持ち上がり足は開かれた。淡い茂みの中から再び兆し始めた雫の半身にキスを落として口に咥えた。 「あっ、いやぁ~、ダメ、しないで、あ、あ、あ」  パサパサと雫の髪がシーツに当たる音がし、雫は身体をよじるも和樹はそれを許さず、口での責めを続け、ローションで濡らした指を雫の蕾みの周りに触れ、柔らかくしてからゆっくりと指を蕾の中に入れていった。 「いや、や、入れないで」 「雫……」  半身から口を離した和樹は自分の興奮を押さえて伸び上がりおびえる雫に語り掛ける。雫は和樹の瞳を見つめる。 「大丈夫、雫を傷つけないから、俺を信じて」 「あ、あ、あ、いや、動かさないで」  まだ堅い雫の蕾は指を1本受け入れるのが精一杯だったが和樹は根気よく中をほぐし、2本の指を受け入れるまでになっていた。和樹の指は中の膨らみを見つけた。 「あぁあ、なに?あ、あ、あ、あ、……いや~」 「ここが雫の感じるところだよ」 「ああぁ……あ、あ、あ、あぁ~、いや、いや、変になる。あぁ~」 「変じゃないよ、素直に感じて」  雫の蕾から水音が響く。丹念にローションを継ぎ足しながら解した蕾が3本の指を受け入れられるようになった頃、和樹は昂ぶった自分の半身にゴムをはめ、ローションで濡らすとゆっくりを雫の蕾の中に腰を揺らしながら少しずつ身を進めていった。  雫は和樹の背中に両腕を必死に背中に回して掴まった。 「雫……」  和樹の瞳は男の色香に溢れ雫はその雰囲気に飲まれていった。   「あぁぁ……あ、ぁあ、う、ん、ん、あぁ、く、く、くるし」 「もう少しだから、ここはどう?」  先ほど見つけた雫の感じる場所に念入りに半身を擦りつけながら奥を目指す。 「あぁ~そこ、そこは……」  雫の身体には震えが走り、ぐちゅぐちゅと水音を立てながら和樹が奥まで進み、圧迫感に苦しんでいた雫も感じる所を擦られ続け、徐々に感じ始めた。その刺激に雫は掴む指に力を込める。 「あ、あぁぁ……や、や、和樹さん、ん、んん、ん、あう、あ、和樹さん、ああ、和樹さん」 「くっ、雫」 「和樹さん、和樹さん、助けて、あぁ、……あ~」 「雫っ!」  和樹は雫の唇を激しく奪い動きを早めていく。出し入れされる度に肌と肌がぶつかる音が部屋に響き渡った。 雫の半身に和樹は手を伸ばし擦った。 「いく、いく、あ、あ、和樹さん!」 「うっ、く、雫、俺も」  雫は和樹より一足早く達し、意識を飛ばした。その後に続いた和樹は荒い呼吸を整えゆっくり半身を雫から出していき、手早く処理と済ますと雫の顔を覗きこんだ。 「雫、雫、大丈夫か?」  肩を揺すり雫に問いかけると長いまつげの瞳を閉じた雫の瞼がゆっくりと開く。 「ん、あ、僕……」 「雫、ありがとう」  一呼吸置いて言葉を出すと和樹は満面の笑みを浮かべた。その笑顔に雫は見惚れてしまう。初めて雫に見せた和樹の表情だった。雫は手を伸ばし身を寄せてくれた和樹に抱きついた。   「和樹さん、好き」 「俺も愛してる。雫」  2人はきつく抱きしめ合い、思いを深く通わせた。額をくっ付けあい2人は視線を合わせ微笑みあい、そして終わらないキスをいつまでも続けた。  夜明けは2人の安らかな眠りの上に舞い降りた。

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