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第26話 決意の夜
翌日無事退院をした雫はその日が夜勤の綾子と共に自宅に戻った。
お互いに部屋で休むことにして雫はベットにぎこちない動きのまま静かに横になった。1人になって浮かぶのは和樹の事だった。雫には何も分からない事だけど、お父様から跡取りにと望まれているのは喜ばしい事ではないのか?知ってしまった今、どうするのが正解なのか、雫の思考はその考えに支配されていた。
(このまま和樹さんの側にいても良いのか?離れた方が和樹さんの為じゃ無いのか?)
雫はお昼を食べずに考え続けた。そして出した結論は自分が身を引くというものだった。いくら考えても行き着く答えはこれしかなかった。
(和樹さんに伝えよう……)
ゆっくりと起き上がり携帯を手にした雫は決意が鈍らないうちに和樹に連絡を入れた。発信を押す指は震えていた。それでも決心が鈍らないうちに済ませてしまいたかった。
「雫!「僕と別れて下さい」
短いコール音で電話に出てくれた和樹の言葉を遮り雫は言い募った。
「ごめんなさい。他に好きな人が出来ました。それじゃ、有り難うございました。」
電話口で、絶句している和樹の様子を感じたが、それらの反応を捨てるように雫は素早く携帯の電源を落とした。
それからしばらくしてチャイムが鳴った。和樹が来たことはすぐに分かった。それでも雫は部屋から出ることはなかった。綾子には申し訳なかったが雫は気が済むまで部屋に籠もった。誰にも会いたくない、考えたくない。その思いしか雫の中にはなかった。
雫はひとり部屋で眠れない夜を過ごした。
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