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第2話
決行の日。
曇り空の中、我々第三軍隊100名と、近衛騎士6名、そして王子と凶王は、王都の門から出発して二日で、件の迷宮入り口に着いた。
言い渡されてから、5日目。
もうすでにうんざりの行程だった。
まず、迷宮は街道を離れた場所にあるため、水の確保に苦労する。
王子は、近衛騎士の持つ魔法で確保していたが、我々一兵卒は、魔法をおいそれと使えるわけがなく、主に付近の魔物退治に使われた。
もうひとつは、この鎖のジャラジャラいう音だ。
音が嫌なんじゃない。まぁ、聞いてて気持ちのよいものでもないけど。
勿論、音の主、凶王が嫌だからだ。
なんで俺達第十四分隊が、凶王の見張り担当なんだ……。
文句は心で呟きながら、凶王をチラ見する。
上背のある男は、頭から足元までを黒いローブで覆う。ちらちらと見える肌は、青黒く、奇妙にねじれている。
担当を言い渡されたときに見えた、その顔は、悪夢に出てきそうなほど、歪んでいた。
隣にいたやつが吐きそうになったほどだ。
闇の力を取り込むたびに歪んでいったというが、正直、同じ人間とは思えない。
その足首には、先の王が従属させるためにつけた、足枷と鎖がある。
凶王がゆらりゆらりと歩くたびに、その音がジャラジャラと鳴るのだ。やはり、いい気分はしない。
歩きなのは、馬車の入れる道ではないからだ。王子のみが馬に乗る。
馬車の見張りに残された、十一、十二分隊が羨ましい。
さっさと終わらせたいが、まだスタートラインにも立っていないのだ。
まずは、疲れを癒しながら、隊列を組み直し、迷宮に入る。
しばらく行った先にある、扉を開けばスタートだ。
「ここからどれぐらいかかるんだろうな……」
「一応、5日が目処らしいけど。それでも往復十日……いや、帰り道の二日もあるか」
「ぐあぁ、気が滅入るぅ」
第十四分隊の面々で、ボソボソと食べる。
凶王はどこをみているのか、上の空だ。
すると、しばらくしてから、声がかかった。
「おい」
見るとそれは王子と近衛騎士御一行だった。
慌てて敬礼する。
「お前たちは、入り口からしばらく、それを連れて俺達に付いてこい。いいな?」
近衛騎士の一人が言う言葉に、ハッ! と歯切れよく返答する。
その間、王子は気分が悪いとばかりに、顔をそらし、凶王はどこ吹く風といった様相だった。
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