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第3話
問題の門は、入り口からほどなくだった。
後ろの隊はまだ、中に入っていないのではないかと思う。
そこにあったのは、こんな何の変鉄もない洞穴には不似合いの、立派な門。
門に着いたことを伝える声を後ろに聞きながら、分隊長が凶王を前に送るのを見守る。
「光はこちら、闇はそっちだ」
門の左右に案内されて、位置に着いた二人が、力を込め始めた。
そしてほどなく、開く扉と、上がる喚声。
斯くして、門をくぐった先には、第三軍隊が全員入っても余裕があるほどの空間と、二本の道があった。
「なんと……これは、外ではなく、ここに本陣を組んだ方がいいな」
第三軍の隊長が、王子に許可を得ると、早速、入り口付近に設営していた休憩所などをこちらに移す作業を開始した。
その間に斥候役が、二本の道に入っていく。
休憩や救護所を移し終わり、ここに残るものとついて行くものの区分けが行われ、奇数隊が行き、偶数隊が残りながら、門が閉まったりしないよう警護することになった。
勿論、不測の事があれば交替だが、正直ありがたい。
しかし。
「おい」
また、近衛騎士が声をかけてきた。
「凶王のお守りを任せていたのはお前らだな」
何か癇に障る事を、やらかしていたのだろうか?
キッチリ背を伸ばし、また歯切れよい返事を6人全員で送る。
するとさっきは目も合わせなかった王子が、ついっと俺達を見回して、
「そいつがいい」
と、俺を指した。
「は?」という間抜けな音を、なんとか飲み込み、けれども戸惑いは隠せず説明を待つ。
近衛騎士が、王子に意向を再度確かめ、こほんと咳払いをした。
「この先、二本の道があるのは分かるな?」
「ハッ!」
「この道は、右はこのまま広いが、左は狭くなっているらしい」
「ハッ、成る程」
「そこで我々は王子をお護りしながら、他の隊と共に、右の道を行く。お前は独り左の道を行く、凶王を見張れ」
「ハッ! ……は?」
今度は、声を押さえられなかった。
何だって? まさか……
あれと二人きり?
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