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第4話

「心配はいらない。あれは、我が王家の命には逆らえぬ。見た目がおぞましいだけの人形だ」 別れて左の道に入る時に、王子はそんなことを言った。 凶王には、兵を一人つけるから、左の道を行けるところまで行くこと、危険は排除すること。行き止まりならそこで待機、兵だけ戻らせること、などを言いつけていた。 「……ふむ、良いだろう……」 はじめて聞いた凶王の声は枯れた低音だった。しかし、頭の中をザラザラとしたもので撫でるような、生理的嫌悪感と不快感がする。 けれども、意思疏通が取れないようには見えなかった。 不思議に思いながらも、俺はまず、自分のことだと思って、装備を今一度確かめた。 「大丈夫か? 災難も災難だな……」 「ヤバイと思ったら、すぐ戻ってくるんだぞ。俺たちは、できる限り左の道付近にいるようにするから」 同じ第十四分隊のみんながそう言ってくれたから、少し安心して、任務に乗り出すことができた。 全く。あっちは40人強で、こっちは化け物と二人きりとか、理不尽にも過ぎる。 ため息をついて、黒いローブの後を追った。 しばらく進んでも、迷宮に付き物の、魔物や罠が見当たらない。 首をかしげながら、ずんずん進む、凶王を見失わないようについていく。 ナナメ後ろからは、やはり黒くねじれた腕ぐらいしか見えず、顔を見た時ほどの忌避感はない。 ジャラジャラいう音は、洞穴に響いているが、外を歩いていた時より、やや軽いような気がする。 もしかして、凶王は自分の他には一人しかいない、という状況に、なったことがなかったんじゃ。そう思うと、今の俺、めちゃめちゃ危ない?  ゾッとしながらも、使命を果たすことだけを心に、足を進める。

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