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第12話 ※
「……っつ……ふ、くっ……!」
俺、が見て、いるものは、
目の前にいるのは、目の覚めるような美形。
の、姿をした、尊敬すべき人。
柔らかな光を纏う、青銀髪の揺らめき。
情欲を湛える潤んだ瞳。
扇情的に赤らんだ頬。
汗ばんだ首すじ。
激しさに抗おうとするかのように、反らした胸。
のた打ち、抗うように煽る腰。
痛々しいほど屹立する剛直。
その後ろで、蠢く膨大な、触手。
唇を塞がれ、両腕を捕らわれ、
両足を大きく広げられ、陰茎の付け根を締め上げられ、
おぞましい触手に、尻孔を侵される。
その上で、肉体のあちこちを舐め上げるように、優しく責め立てられ、何度も繰り返し快楽を擦り込まれ。
その瞳は、光を失い完全に堕ちている。
筈なのに、時折、光を煌めかせ、まだ理性が残っているのだと、希望を持たせるのだ。
また、彼の口を塞ぐ太い触手が、ドクンドクンと脈打ち、彼の中に無理矢理、体液を飲ませる。
すると、彼の体が赤く染まり、反射的に熱を逃がそうと悶え、顔を背けようとし、背をますます反らせ、触手を振りほどかんばかりに腰を激しく振る。
そしてまた、それに感じたように、頬を赤くするのだ。
口を塞ぐ触手が脈打つたびに、彼の心がすっかり堕ちてしまうように、と願う俺。
いっそのこと、その方が楽だ。こんな状態を、理性を持ったまま耐えるなんて。
しかし、彼はひとしきり身悶えたあと、その目を開き、紫と金の異色の瞳に、僅な希望の光を湛えるのを繰り返す。
もう、もう終わりにしてくれ……!
俺は、
俺は。
自らの愚息を、押さえ込むのは限界だった。
頭の中で、何度も何度も、彼を犯す。
何度も何度も、中を攻めて、
何度も何度も、奥に吐き出す。
声をあげて抗う彼を、言葉で攻めて、その頬をより羞恥に染める。
何度も何度も、愛していると囁き、
何度も何度も、舌を絡めた。
頭の中では、いくらでも酷いことができる。
必死に抗い、嫌がる彼を組み敷ける。
だが、判っている。現実にそんなことはできない。
道中の優しい言葉や態度を思い出してしまう。
彼は、彼は……。
俺は、彼が好きになってしまった。
涙が、止めどなく流れる。
俺は、彼が、好きだ。
頭の中でのように、欲望のまま組み強いて、嫌われたくない。
そう、俺は。
彼が、好きなんだ。
そう思うと、やっと立ち上がれた。
荒くなった息も、荒ぶる愚息も、もうどうでもいい。
彼を、助けなければ。
まっすぐ、彼の涙でグシャグシャになった目を見つめる。
色を消していた瞳に、また光が灯った。
ダメ、と、その瞳がいう。
俺は、足を一歩前に進めた。
彼を、あの忌まわしい触手から、解き放つために。
唯一持っていた、安いナイフを、握り締める。
こんなものでは何の足しにもならないだろうが、ないよりマシだ。
俺はどうなってもいい。
彼を、逃がす。
彼は、ふるふると、首を振った。
何の弾みか、その口を塞いでいた、触手が外れた。
彼の愛らしい唇から、声が漏れる。
「…逃げてぇ……っ」
その微かな響きに気をとられた瞬間。
俺の足は、デス・テンタクルに捉えられた。
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