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第18話 ※

いやいやいや、なんで殺さないの!? そう言おうとしたが、冷静になれば、徹頭徹尾、凶王がこちらを殺すと言ったことはない。 逃げろ、などこちらを気遣うことは言っても、命を脅かすことなどを、することもやることもなかった。 人格者。 まさに、この、邪悪そのものと言われている存在から、かけ離れたものが、この腕の中にある。 「……ええと、……確認なんだけど、ラルドは『凶王』、なんだよな?」 ここにある存在が、聞きしに及ぶものと、かけ離れすぎて、混乱する。 噂が真実とはちがうなんていうことは、よくある話だが、『凶王』というのは、俺が産まれたときから、悪そのものと伝えられる、化け物なのだ。 ここで、二人きりになってから、噂とはちがうとは思っていたわけだが、それにしても。 じっと、ラルドを見ていると、質問からしばらくは、キョトンとしていたが、やがて顔を寂しそうに歪めて、俯いた。 「ええと、あの、ハイ。「我は『凶王』と呼ばれしもの」……です」 背筋に、悪寒が上る。 彼が「我は……」といった言葉は、確かに、凶王の、怖気の走る、不快感を伴う声だった。 その、美しく俯いた顔は確かに天使なのに、その台詞だけがおぞましい。 「その声」 「証明になりました?」 「……ああ」 ふわ、と微笑む顔に、頷く。 普段は、低く嗄れた、心地のよい声。それに、強制的に不快感を起こす何かを被せると、『凶王』の声になる。 確かに同じはずなのに、あの不快感はどこから来るのか。 そう思っていたら、解説された。 「声に、闇の魔力を濃縮して纏うと、ああなるんです」 なるほど。 いや、声に纏うとか、魔力を濃縮してとか、わからないところはあるが、凶王ならできるんだろう。 頷くと、ホッとしたように微笑まれる。かわいい。 「あ、大きくなりましたね」 言うなぁああ!! もう、いたたまれなくて、話題をそらす。 「その……! しゃべり方は?」 そうだ。あの尊大なしゃべり方がなくなってる。丁寧だが、親しみやすい、愛らしい言葉遣いだ。 その、低く心地好い声と相まって、ひどく艶かしい。 ダメ? とか、首をかしげないでくれ。誤魔化すように、下半身を揺するのもダメだ。いや、本当に誤魔化される。ダメだこれ。ああ…… 我慢できずに出すと、ラルドは嬉しそうに胸元にキスした。 「うん……抜けましたかね? これ闇の魔力に変換できるんです」 「っ……はっ…… そうなのか?」 「ええ。私の力の殆どをブチ込んで、あれを内側から壊しましたからね。力が戻るのに時間がかかるから、少しでも吸収しないと」 どうやら、この行為には、彼の都合も伴っているようだ。ホッとする。自分だけが気持ちよくなっているという事実に、申し訳ない気持ちがあったから。 彼自身のためにもなるのなら、罪悪感も減るというものだ。 「ガイリが気持ち良さそうだから、っていうのもありますが」 「……っっ!」 にっこりと悪戯に言われて、萎えかけたものに力が入る。 まだ、彼の中に入ったままのそれは、興奮を伝えてしまう。 「ふふ。もうちょっと残ってるんですかね……私に、くださいな?」 囁くように言ったラルドが、淫魔のように婉然と微笑み、つ、と俺の臍の上から胸にかけてを、指で逆撫で、さらに俺自身を硬直させる。 そしてまた、ゆっくりと抽挿をくりかえす。 ああ ああ 俺は、俺は。 この人を自分のものにしたい。 そう思った、次の瞬間、俺は彼を押し倒し、体の上下を入れ替えると、激しく腰を動かし始めた。 「あ……っ、ああっ……ああんっ」 入れ替わった瞬間には、驚いていた彼も、すぐに瞳を蕩けさせて、俺の衝動を受け入れてくれる。 愛おしい、その姿に興奮が押さえられず、唇を奪う。 「はむ…んっ……くちゅっ……」 咥内を蹂躙しながら、念願の胸を揉み、乳首を弾く。 「はふっ! ぐ……はぁっ……ぁむ……っ」 すべてに敏感に感じながら、すべてを受け入れてくれる彼に、感謝しながら、一番奥に打ち付けた剛直で、白濁を流し込む。 「はぁ……っ、あああッッ……!」 感じてのけ反ったために、外れてしまった唇を追って、彼の頬に手を伸ばす。 そして、両頬を持って、こちらを向かせると、 「愛している」 と、その目に宣言して、唇を合わせた。 潤んだ瞳が、嬉しそうに閉じるのを見ながら、俺はまた深く、彼を愛した。

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