22 / 54
第21話
反応がないことを、訝しんで、顔をあげると、口元を隠して顔を真っ赤にした、ラルドと目があった。
ええと……どした?
首をかしげると、目をそらしてしまう。
「ラルド?」
「いや、その」
……やばい、引かれた?
心配して見つめると、軽く目をつぶって、こんなことをいう。
「……その、そこまで……想ってもらっているとは、思わなかったから……」
なんだそれは。かわいさで、萌え殺す気か。
しかも、言ったあとから、さらに耳まで赤くなっている。もうこれは確定だろう。
「俺を、完膚なきまでに、メロメロに惚れさせようとか、そういう魂胆か」
「魂胆とか、そういうものはありませんから」
否定されたが、信じられるか。
ベタ惚れしている自覚が出てきたが、これ以上なく愛していると思っていたのに、さらに深くなるんだ。もう、魂の奥底までも持っていこうとか、そういう事だとしか、思えない。
「ダメだ。ラルドから離されたら、たぶん俺は死ぬ」
「何いってるんですか、ガイリ!?」
会えなくなるかもしれない、と思うだけで、手に震えが出てきた。ヤバい。今すぐ彼を抱き締めたい。
「わかりました、私も離されないように、考えますから!」
慌てたようなラルドが、頬に赤みを残したままそう言った。
「離されないように?」
「ええ……手立てはある筈です」
深く息をついた彼に、俺もほぅ、と息を吐いた。
何か、肩の荷が降りた気分だった。変に背負い込んでいたらしい。
二人で笑いあった。
「まぁ、ともかく。まずは……」
「まずは?」
「……服を着ましょうか」
……お互い、裸のままであった。
しかし。
「……荷物は最小限だから、着替えは下着だけなんだが」
しかも一人ぶんだ。シャツもボトムスも、上着も靴下もない。さらに言えば、
「靴もないぞ」
この先の岩場を、履物無しでは、行けそうもない。
あの触手め、全部取り込みやがった……!
ラルドも呆然としている。この事態には、予想していなかったのか。自分の足首を、さわさわと撫でている。
割りと抜けたところもあるのだな、と可愛らしく思っていると、呟きが聞こえた。
「鎖……」
……あ。
そう言えば、デス・テンタクルから出てきた時には、すでに凶王の足首に填められていたはずの、鎖はなかった。
そうだ。王子が何か言ってたな。確か、この鎖があるかぎり、逆らえないとかなんとか。
「あれは呪具なんです。けして、はずすことができないはずの」
そうして、足首をつかむ。
「大丈夫です、ガイリ。私は彼らから、逃げられます」
決意を込めた、金と紫が、こちらを見つめる。
すごく綺麗だ。
綺麗だけれど。
「うん、服を、どうしようか?」
問題は、解決していない。
ともだちにシェアしよう!