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第21話

  反応がないことを、訝しんで、顔をあげると、口元を隠して顔を真っ赤にした、ラルドと目があった。 ええと……どした? 首をかしげると、目をそらしてしまう。 「ラルド?」 「いや、その」 ……やばい、引かれた? 心配して見つめると、軽く目をつぶって、こんなことをいう。 「……その、そこまで……想ってもらっているとは、思わなかったから……」 なんだそれは。かわいさで、萌え殺す気か。 しかも、言ったあとから、さらに耳まで赤くなっている。もうこれは確定だろう。 「俺を、完膚なきまでに、メロメロに惚れさせようとか、そういう魂胆か」 「魂胆とか、そういうものはありませんから」 否定されたが、信じられるか。 ベタ惚れしている自覚が出てきたが、これ以上なく愛していると思っていたのに、さらに深くなるんだ。もう、魂の奥底までも持っていこうとか、そういう事だとしか、思えない。 「ダメだ。ラルドから離されたら、たぶん俺は死ぬ」 「何いってるんですか、ガイリ!?」 会えなくなるかもしれない、と思うだけで、手に震えが出てきた。ヤバい。今すぐ彼を抱き締めたい。 「わかりました、私も離されないように、考えますから!」 慌てたようなラルドが、頬に赤みを残したままそう言った。 「離されないように?」 「ええ……手立てはある筈です」 深く息をついた彼に、俺もほぅ、と息を吐いた。 何か、肩の荷が降りた気分だった。変に背負い込んでいたらしい。 二人で笑いあった。 「まぁ、ともかく。まずは……」 「まずは?」 「……服を着ましょうか」 ……お互い、裸のままであった。 しかし。 「……荷物は最小限だから、着替えは下着だけなんだが」 しかも一人ぶんだ。シャツもボトムスも、上着も靴下もない。さらに言えば、 「靴もないぞ」 この先の岩場を、履物無しでは、行けそうもない。 あの触手め、全部取り込みやがった……! ラルドも呆然としている。この事態には、予想していなかったのか。自分の足首を、さわさわと撫でている。 割りと抜けたところもあるのだな、と可愛らしく思っていると、呟きが聞こえた。 「鎖……」 ……あ。 そう言えば、デス・テンタクルから出てきた時には、すでに凶王の足首に填められていたはずの、鎖はなかった。 そうだ。王子が何か言ってたな。確か、この鎖があるかぎり、逆らえないとかなんとか。 「あれは呪具なんです。けして、はずすことができないはずの」 そうして、足首をつかむ。 「大丈夫です、ガイリ。私は彼らから、逃げられます」 決意を込めた、金と紫が、こちらを見つめる。 すごく綺麗だ。 綺麗だけれど。 「うん、服を、どうしようか?」 問題は、解決していない。

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