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第23話

俺が着替えている間、ラルドは自分にできることを確かめていた。 「これと……これも問題ない」 今は、幻術を纏って、凶王の姿になっている。 たぶんイケる、と思っていたが、本当にイケると、ちょっと驚く。とりあえず、まだベルトを締められていないが、近づいてキスをしておいた。 ものすごく驚いた顔をされた。してやったり。 「光は、知識として知っているだけでしたけれど、知っている限りのことはできそうです」 ごまかすように、言ったラルドの顔色は分かりにくいが、照れているのはわかる。可愛い。 「可愛い」 「そういうことを、言うのは反則です」 ムッとしたように言うが、可愛いだけだ。抱き締めていい? 彼の声に、不快感はない。魔力を纏わせることは可能だが、以前のように、常に纏った状態になってしまう、ということはない、と説明される。 ってーことは。 「以前は気を使って、魔力を纏わせないようにしていたのが、今は、気を入れて、纏わせるようになった、と?」 「その通りです」 首肯く彼に、ふぅん、と返すが、これが大きな違いだというのは、よくわかっている。 以前は通常の状態でオンだったものが、今はオフだというのなら。 「やっぱり、ラルドは光の魔法使いになった、ということだろうか?」 これには横に振られた。 「いえ、光も闇も使えるのだから、『光の』ではないでしょう。そもそも、そんな魔法使いは存在しないのです」 「でも、いるじゃないか」 「そうではなく……ああ、いえ、そうですね。最大限、利用しなければ」 悩んで、口元に拳を当てる彼を、後ろから抱き締めようとしたが、彼の方が背が高いので、うまく思い通りにはできなかった。 だが、後ろから捕まっているだけの俺にも、その体は、ちょっとした驚きと嬉しさを伝えてくれる。 「嬉しい」 俺の口から、言葉が漏れる。 「ん?」 「好きな人が、自分を受け入れてくれる、っていうのは、こんなに嬉しいものなんだなぁ、って」 とても素直に、思う言葉を伝えた。 そして、あれ、と思う。 俺は、こんな素直に言葉を口にするタイプだったろうか。 いや、どちらかと言えば、好きな娘には、気を引きたくて、ついつい意地悪をしてしまったりするタイプだ。 そう、素直になれず、口では罵ってしまうタイプ。なのに、なぜ。 そんな、かすかな疑問を浮かべる俺の上から、その声は降りてきた。 「……嬉しい」 顔をあげれば、体ごと捻るようにこちらに顔を向けようとする、彼の姿があった。その、切なげな(おもて)は白い。凶王ではない、素のラルドだ。 「それは、私の台詞です。愛おしい人が、自分を好きだと言ってくれるのは、嬉しく……なんて幸せなことなのか」 ひどく切ない、そして美しい微笑みに、腕の力を弛めれば、ラルドはくるりとこちらに向き直って、俺の頬を両手でくるんだ。 「こんな奇跡が、世界にあるとは、知りませんでした。愛しています、ガイリ」 下りてくる唇に、目をつむりながら、ああ、と気がついた。 俺はこの人は、 この人だけは、一條も傷付けたくないんだ、と。 謎がひとつ、解けて、唇に温かさを受け入れる。 同時に温かくなる心に、共にいたい、という思いを強くした。 ―――――――――――――――――――――――――――――― よく考えたら、年下攻めだった。 年齢差すごいんですが、見た目は同じぐらいで、雰囲気でラルドが年上に見えたり、年下に見えたりするイメージです。 次から、移動開始します♪

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