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第24話
広間のあとは、また、それまで通ってきた道と同じような、曲がりくねったり、狭くなったり、少し幅が広くなったり、軽く上ったり降りたり、そういう道だった。
そこを俺は、ラルドの手をとって歩く。
ラルドは、まだ歩き慣れないようで、魔法で自らを補助しているものの、支えがあれば、嬉しい、と、そう言った。
基本的に危なげなく歩いているが、時々、変なところでつま先立ちになったり、足を一歩後退させてから前に出したりしている。
その表情は固い。
俺は、ただただ歩きやすいように、できるだけ平坦で、邪魔な岩の落ちていないところを、女性を優しくエスコートするように進んだ。
そう、こう……彼の手を、下から支えるように握って……って、
「っあ!」
「わッ」
ラルドがバランスを崩し、反射的にその体を支えようとした。だが、彼はもともと俺が支えていた腕の方に、両手でしがみつき、転倒を免れる。
「あぶなかった……」
心配する俺に、大丈夫、と言って姿勢を直すラルド。
「慣れてきたと思って油断すると危ないですね」
「気を付けてくれよ」
こちらが眉を潜めたのに、くすくすと嬉しそうだ。それを見ると、肩の力が抜ける。
「気を付けます。本当に」
「うん。怪我とかされたら、ヤだからな?」
にっこり微笑んで頷くラルドが、本当に楽しそうで、薄暗い洞窟を進んでいるのに、なぜか二人きりでデートをしている気分になってくる。
こっちの気も知らないで、と思いつつ、進もうとしたら、捕まれた腕の、両手に力が込められる。
なに、と振り替えったら、
「気を付けるので、両手で繋いでていいですか?」
と伺うように首をかしげられた。
可愛すぎるだろ。
顔が熱くなるのを自覚しながらも、ぶんぶんと音がするほど肯定して、足を進めた。
ゆっくり、危なくないよう進んでいく。
その、彼の足元は軍靴だ。
もともとは、何か黒い布っぽいものを巻いているように見えていた。本当に布だったらしい。
「左右の足の大きさも、それから長さも違いましたから。歩くときは、ずっと右は背伸びをしていたので」
「だから、時々つま先立ちになるのか」
「そうそう」
そう言って頷くラルドを見て、もうひとつ気がついたのが、『凶王』の時よりも、背が低いこと。
今も俺より背が高いが、凶王はもっと見上げるような迫力があった。
聞けば、背伸びに加え、胴体が変に捻れて背骨が伸ばされていたようだと言われた。
「体の状態を調べて、逆にどうやって動いていたんだろうと思いました」
「ホントだよ」
あははと軽く笑っているが、実態は笑い事ではない。痛みもあったのだろうかと、気分が沈む。
「……実を言うと、もう、闇の力がほぼ元通りなんです」
「え……」
「でも歪んでない。あの姿になるのは、本当に幻影だけになるんですね」
ふわりと笑う彼は、嬉しそうで、俺は良かった、と一人ごちた。
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