25 / 54

第24話

広間のあとは、また、それまで通ってきた道と同じような、曲がりくねったり、狭くなったり、少し幅が広くなったり、軽く上ったり降りたり、そういう道だった。 そこを俺は、ラルドの手をとって歩く。 ラルドは、まだ歩き慣れないようで、魔法で自らを補助しているものの、支えがあれば、嬉しい、と、そう言った。 基本的に危なげなく歩いているが、時々、変なところでつま先立ちになったり、足を一歩後退させてから前に出したりしている。 その表情は固い。 俺は、ただただ歩きやすいように、できるだけ平坦で、邪魔な岩の落ちていないところを、女性を優しくエスコートするように進んだ。 そう、こう……彼の手を、下から支えるように握って……って、 「っあ!」 「わッ」 ラルドがバランスを崩し、反射的にその体を支えようとした。だが、彼はもともと俺が支えていた腕の方に、両手でしがみつき、転倒を免れる。 「あぶなかった……」 心配する俺に、大丈夫、と言って姿勢を直すラルド。 「慣れてきたと思って油断すると危ないですね」 「気を付けてくれよ」 こちらが眉を潜めたのに、くすくすと嬉しそうだ。それを見ると、肩の力が抜ける。 「気を付けます。本当に」 「うん。怪我とかされたら、ヤだからな?」 にっこり微笑んで頷くラルドが、本当に楽しそうで、薄暗い洞窟を進んでいるのに、なぜか二人きりでデートをしている気分になってくる。 こっちの気も知らないで、と思いつつ、進もうとしたら、捕まれた腕の、両手に力が込められる。 なに、と振り替えったら、 「気を付けるので、両手で繋いでていいですか?」 と伺うように首をかしげられた。 可愛すぎるだろ。 顔が熱くなるのを自覚しながらも、ぶんぶんと音がするほど肯定して、足を進めた。 ゆっくり、危なくないよう進んでいく。 その、彼の足元は軍靴だ。 もともとは、何か黒い布っぽいものを巻いているように見えていた。本当に布だったらしい。 「左右の足の大きさも、それから長さも違いましたから。歩くときは、ずっと右は背伸びをしていたので」 「だから、時々つま先立ちになるのか」 「そうそう」 そう言って頷くラルドを見て、もうひとつ気がついたのが、『凶王』の時よりも、背が低いこと。 今も俺より背が高いが、凶王はもっと見上げるような迫力があった。 聞けば、背伸びに加え、胴体が変に捻れて背骨が伸ばされていたようだと言われた。 「体の状態を調べて、逆にどうやって動いていたんだろうと思いました」 「ホントだよ」 あははと軽く笑っているが、実態は笑い事ではない。痛みもあったのだろうかと、気分が沈む。 「……実を言うと、もう、闇の力がほぼ元通りなんです」 「え……」 「でも歪んでない。あの姿になるのは、本当に幻影だけになるんですね」 ふわりと笑う彼は、嬉しそうで、俺は良かった、と一人ごちた。

ともだちにシェアしよう!