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第25話

手を取り合い、ラルドの足も慣れてきた頃、大きな扉とその前にある巨大な広場が見えてきた。 ちょうど、最初にこの洞窟に入った時の扉と、入ってすぐの広場に似ている。違うところと言えば、澄んだ地下水で満たされた泉があるところだろうか。 道は扉の辺りから見て、左右にあった。 俺たちが辿って来たのが、右側の道。 左の道に入ったから、反転して右に見える道から出てきた。 つまり、右の道から入った王子達は、反対側に見える左側の道から来るということだ。 そちらには、まだ、なんの気配もない。 「あと、どれぐらいで来るんだろう?」 扉に近い場所に荷物を置き、泉の水を汲みながら、道をうかがっていると、扉を見ていたラルドが振り向いた。 「彼らは、罠があるから、行ったり戻ったりしているんですよ。道としては、私たちが来た方よりも短いから、もうすぐ……いえ、一日半といった所でしょうか」 「あれ? けっこう、余裕あった?」 俺たちが、デス・テンタクルと会敵したのが、一日目の終わり。どれぐらいの間捕まっていたのかは分からないが、会敵した広場から離れたのは3日目の中頃から終わり、そこから一日分歩いたので、今は4日目のはずだ。 こちらの道は、歩いて二日分の距離。あちらは、距離は短いとはいえ、罠があるために3日ほどはかかるだろう。 それが、あと一日半。5日以上かかっている、ということになる。 「調べた時には、それほど変わらないか、先にあちらがついているか、だと思ったのですが……」 首を傾げるラルド。俺もつられたように軽く傾げる。 「ずいぶん動きがゆっくりですね。進んではいますが、昨日とあまり変わらない位置を、昨日の3倍は慎重に進んでいます」 「そうなのか……」 「……怪我人でもいるのでしょうか。いえ、そうなら戻るはず……」 顎に手をあてて考え出すラルドを見つつ、俺は今のうちに食事を取ることにした。 あ。 「ラルド、食事はいる?」 「要らないですよ。一人分でしょう?」 「少しなら余裕があるけど」 「一応、断食状態なので、固形物は遠慮しておきます」 「確かにそうか……」 保存食は、固い。これをある程度水や飲み物で柔らかくして食べる。 これをしばらく食べていない人間に与えるには、鍋に割ったものを入れて、しばらく煮込まなくてはならない。 水と時間はあるが、鍋がない。 「あれ? じゃあ、食べ物は食べられないとかじゃないんだな」 「一応、人間なので。魔力が過剰にあるせいで、簡単に死ねないだけですから」 「……それ……めちゃくちゃ、腹は減ってる、ってことなんじゃ……」 「久しぶりに口にしたものが、媚薬と精液とか、すごいですよね」 「ちょ、おま」 笑い含みに返される、冗談に笑えない。 確かにそんな状態だったわけだ。顔をしかめる。 え、それで集中力のいる魔法が打てるの? 腹ペコどころか、飢餓状態で? 凶王半端ない。それとも、もしかして、今まで出会った魔法使いが、サボってただけなのか? 戦慄していると、となりにちょこんと座られた。 「今の動きでなら、一日半でしょうが、昨日の調子を取り戻したなら、半日、ということもあるかもしれません。罠がありますから、そこまで早くはならないでしょうが、今のうちに、口裏あわせをしておきましょう」 口裏あわせ? 保存食を口に入れた瞬間だったので、すぐに疑問を返せなかった。 だから疑問顔だけを返していると、 「作戦会議、とも言い替えできますね」 と、にっこり笑われた。

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