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第27話(※別視点)

凶王・ラルド 視点 ―――――――――――――――――――――――――――――― 予測通り、一日半後。 斥候のあと、先ずは王子たちが到着しました。 私は、未だ鎖に繋がれた虜囚の振りをして、扉の隣に凭れかけました。 以前より、少し低くなった背を、つま先立ちと幻影で誤魔化すので、不自然なくごまかせる幅を広げておきます。 ガイリは、入り口から道を覗いて、後進を待っています。 王子と周囲の近衛騎士、その他数名の兵士を除いて、ほとんどの人が傷を負い、中の数名が、本来なら動かすこともならない重傷者だとは伝えてあります。 伝えてすぐ、ガイリは手当要員に回りたいと告げてきました。 こちらもそれをお願いするつもりでしたから、こっそり怪我人を寝かせるための、不自然にならない程度の厚さの絨毯を、彼に渡してあります。 後進がやって来るとすぐ、ガイリは活用していました。 ああ、ガイリは本当に働き者だなぁ。無茶をしないといいんだけれど。 ……それに比べて。 私は、興味もなく、辺りを眺めている風に、王子の様子も伺いました。 簡易的な椅子に文句を言い、足下に絨毯がないことに文句を言い、傷病者がいるとわかる人々が、動きが遅いだの、こちらに侍らぬのがおかしいだの、あまつさえ、手当を置いて整列させろだの、訳のわからないことを言っています。 あれを見ると、いくらでも『冷徹な凶王』になれる気がします。 先ほどからずっと、こちらを睨んでいますから、あまり直接に目線は向けられませんけれどね。 傷病者の手当を指示し続ける、彼らの怒号をもどかしく聞きながら、佇んでいると、やがて、王子たちがこちらにやって来ました。 「ふん。また同じ扉か」 そう、扉の意匠は同じ。 光の魔力と闇の魔力を込めることで開く扉です。 ですが……。 「さっさと開けるぞ。凶王にそちらに行かせろ」 近衛騎士に押されて、門の左側に寄せられました。闇の魔力を込める側。王子は右側の光の魔力を込める側につきました。 そして、躊躇なく手を押し当てます。 ダンジョンなら、ダンジョンボスの出る部屋などに繋がっていてもおかしくないんですがね。今の手勢でも十分だと思っているんでしょうか? ああ、はい、手を付くんですね。わかりました。 ……ん? 「なんだ? おい、凶王、さっさと魔力を流せ!」 先の扉と同じように、魔力を流しますが、反応しません。 何故…… 扉を見上げ、そしてキャンキャン吠える王子を見て、あることに気付きました。 まさか……。 「おい、聞いているのか! さっさと……」 『逆だ』 声に闇の魔力を纏わせ、尊大に簡潔な言葉を吐き出す。 怒気に歪めていた顔を、さらに嫌悪でしかめる王子に、言葉を重ねる。 『回路が逆になっている。左右反対に魔力を込めれば、開かれるであろう』 位置を変われ、を丁寧に言ってやると、まわりの近衛騎士が王子に耳打ちし、さらに装飾されて伝えられます。 やがて、不満げながら、怒気を払った王子が動き始めたので、少し遠回りに右側に向かいました。 つま先だからと、ちょこちょこした動きにならないように、気を付けて歩きましたが、端から見たら異様にゆらゆらしていそうです。 不気味演出になるといいのですが。 さて。 王子が左について、魔力を込めます。私もすぐに、右に魔力を込めました。 扉は、すんなり開きます。 やれやれ……ややこしいことになっていますね。 頭の中に組み立てた逃亡計画書を、大幅に変更する必要があります。 満足そうに、開く扉を眺める王子を後目に、ちらりと後方を見れば、今度は食事の用意を始めるガイリが見えました。汗だくで鍋と食材を運んでいます。 早く、彼とここから逃げたい。 こっそりと一息ついて、扉の中の探査に向かいました。  

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