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第33話(※流血表現注意)
バタン、という音が響いたのはその時だった。
辺りが真っ暗になり、灯りがすべて、消えたのを知る。
「……ッ! なんだ!?」
扉の方からは、怒号と、バンバンと叩く音が聞こえてきた。すぐにゴンゴンという重い音になり、複数になる。騒ぐ声も、大きくなる。
「何だ、何が起こってる」
「……ああ……ついにやりましたか」
ラルドから声がして、衣擦れの音がした。何か知っているのか?
「あの王子 が、『凶王』 を、怪我人ごと、閉じ込めたんでしょう」
「は?」
何て?
手探りで、ラルドを探り当て、それを掴む。
「ふゃん」
「こんな時にエロい声出すな……! 何だ、知っているのか!?」
「いつでも感じるようにしたのは、貴方でしょうが……! 可能性のひとつとしては、予想していましたよ。最悪のものではなかったのですが……いえ、もう少し確認します」
「最悪?」
「ええ、兵士を全員殺して、それを『凶王』のせいにして閉じ込めるとか」
王子が、そんなことを? いや、確かに『凶王』を封印するだとか言ってたが。
「……嘘だろ」
「やりかねないでしょう?」
「やりかねないけど」
全く否定できないが。でも、まさか本当に、他の人間まで巻き込むなんて。
「私を閉じ込めるなら、ぴったりな場所ですよね。素直に私だけ閉じ込めれば良かったのに」
そんなことを言う。
だが、ここに合流したときの様子を見るに、ラルドは本が好きなのだろう。この、王都の協会の図書室に勝るとも劣らない数なら、本好きには堪らないんだろうな。
けれど、俺と離れても平気というような、言い種は我慢ならない。
「お前な……」
「私だけなら、出入り自由ですからね。堂々と、『凶王とは別人です』と宣言できるでしょう?」
……! そうか、ラルドは空間移動ができるのだったか。自分自身限定のものだと言っていたから、俺や他の人間には使えないが……。
そう思うと、今の状況はどうなんだろう。
「確かめてみましたが、外には、彼ら4人の他に、6人ですね。中には20人が閉じ込められている……」
「それは、俺たちを含めて?」
「含めると22ですね。うち、怪我人が軽傷を含めて18……ちょっと、言い争いになってますね。灯りはつけましょうか」
「灯りはつくんだ」
「魔力灯なので」
ふわりとした光が、ラルドと俺の間に灯る。光魔法だ。
だが、魔力灯をともす前に、
「ああ、不味い。怪我人が増える……」
そう言って、険しい顔をしたラルドに、何事かと聞こうとすれば、扉の前の非難の声が、さらに険しく大きくなった。
「何が起きてる……!」
「事態を非難した兵を、王子が斬りました。命はありますが……ちょっと、早くあいつら立ち去ってくれませんかね」
「なっ……!」
完全な暴挙に、頭に血が上る。
「なんでそんなことに」
頭を抱えた俺に、ラルドは思わぬことを言った。
「まぁ、狂っているんでしょうね」
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