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第34話(※流血表現注意)

「……は?」 狂ってる? 何が? 事態が? だとしたら、確かにそうだけど。 すると、ラルドは持っていた光を、ふわりと天井に押し上げた。 「あのね、あの王子は、実は闇の魔力のほうが強いんです」 思わぬ告白と共に、灯籠に光が到達し、灯りがついた。 「元々、あの男が私を捕らえたのは、王家に生まれた『闇の魔力持ち』を、『光の魔力持ち』にするためなんですよ」 そこからの衝撃的な告白は、とても信じられないものだった。 ラルドを捕らえた王は、自らの王子が『闇の魔力持ち』であるというのが耐えられないと言い、その王子の魔力をラルドに吸いとらせたという。 そうすれば、光の魔力持ちに変化するからだ。だが、吸い取り続けなければ、戻ってしまう。 ラルドは、元々多かった闇の魔力が、さらに肥大化したと言っていた。それを、様々な魔法という形で、発散させてきたらしい。 それからも、王家に生まれた『闇の魔力持ち』は魔力をラルドに移し、もしくは、『光の魔力』を逆に注入させることで、体面を保たせたそうだ。 ちなみに、それまでは、『闇の魔力持ち』は、秘密裏に処分し、死産と公示していたそうだ。 「王家には、『光の魔力持ち』しか生まれないと言われていたが……」 「光と闇は、表裏一体の魔力ですから。どちらも生まれるものですよ」 実際、闇の魔力持ちの村でも、光の魔力持ちがたまに生まれたのだそう。彼らが自立できる年齢になると、村から出して、戻って来ないよう、村ごと移転を繰り返したという。 「じゃあ、王家は、光の魔力と闇の魔力のしくみを知っていたのか」 「いいえ、それが、理解していないんです」 「へ!?」 「あの男は、闇の魔力持ちを光の魔力持ちにしろ、と言い、私がそれを成せたので、それで良しとしたのです」 「はぁ? それでいいのか?」 「それでも、国はまだもっていますよ」 次々と知らされる、恐ろしい秘密に困惑する。 だが、最も戦慄したのは、次の話だった。 「今は、王や王弟他……元は『闇の魔力持ち』ではなかった王族は、第二王子と、第一、第五王女だけですかね」 「……ぬぁ!?」 待て、ほとんどの王族が、闇の魔力持ち……!? 「それって……!」 「中でも、元の光の魔力が少なくて、注入してやったのが、あの第三王子と、現王と……あれ? もしかして、王国ヤバイ?」 「ちょ……!? どういうことだ?」 「いえ、もしかしたら、ですけれど、『凶王』の闇の力が、一旦寸断されたせいか、足枷が解けてしまったせいかで、繋がりが薄れて、注入していた光の魔力が急激に減ったか、抑えていた闇の魔力が増したか、したのではないでしょうか」 顔を青くする俺をさておいて、ラルドは何やら、布ものをバサバサと広げながら、あっけらかんと言う。 「元から、光の魔力に対する反発が高い子だったので、余計に大量の光の魔力を込めていたのですが、近頃、狂いの前兆である『性格の歪み』が見え出したので、心配は、していたんですよね……」 「なんでそんな、冷静なんだ……」 我慢しきれず尋ねると、なんの感情もなく、返事がなされる。 「私としては、王国が滅んでも全く問題がないので」 「……なっ……!!」 ラルドは、隣国のあそこか、新興で勢いのあるあの国が、拾ってくれたらありがたいかな、と、これまた軽く言う。 俺は……俺は、そんなにすぐには切り替えられなかった。 国が滅ぶ? そんな、バカな……。 そんな俺を知ってか知らずか、ラルドは話題を転換して迫ってきた。 「さて、作戦を始めましょうか」  

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