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第41話
そのあとは一睡もできずに、寝袋の中で過ごし、周りが起き出すのを見計らって、寝床を片づけた。
その間に不寝番は何度か交代したが、ラルドは眠った様子がなかった。
気が高まって眠れない、壷の中でずっと寝ていたから、なんて言い訳が聞こえた。
そういえば、ラルドの事後以外の寝顔知らないな。しかも、すごい短い間しか見られないし。
寝る必要がない……?
いや、食べ物も、必要ないとかいいつつ、スープ食べてた……いや、道中で勧めたのに断ったのは、固形保存食だったからだっけ。
断食の上に睡眠時間ほぼなしとか、俺なら発狂する。
すごいなぁ、尊敬するよ、本当に。すでにしてるけど。
はぁ……ホントに、そのうち捨てられるんじゃないかな。早ければこの洞窟から出てすぐに。
そんなことを考えながら、食事作りに参加する。今日も保存食や干し肉を使った、簡単なメニューだ。水場から水を運ぶのが、一番大変な作業じゃないだろうか。
そう思っていたら。
「おう。昨日のスープの味付けしたの、あんただろ。今日も頼むよ」
何て言われてしまった。
いや、味付けぐらい、適当でいいんじゃ……と思っていたら、やたらキラキラした瞳でこちらを見るラルドと目が合った。
あれを作ったのは、あなたか!
そういう目だ。
やめてくれ。味付けなんて、ちょっとした塩加減ぐらいなんだ。俺は料理屋でも調理師でもないぞ。
だから、やめてくれ。その尊敬の目は辛い。
今、あんたは、俺を含む周りすべてから尊敬されている立場なんだ。その、キラッキラの笑顔を、わきまえてくれ……!
いたたまれず、俯いて顔を覆っていると、聞いてきた兵に心配された。
ああ、うん、大丈夫。あそこにいる人が眩しいだけで。
そういうことを言ったら、すごく納得されてしまった。
うん。眩しいんだ。そして、いろんな意味で、いたたまれない。
「さて、食べながら聞いてくれ」
そう言ったのは、第三隊の副隊長。
食事が出来上がり、全員に配って三々五々食べ始めた所だった。
ちなみに、現在いるのは、奇数隊。三、五、七、九、十三、十五、十七、十九隊。
第一隊は、軍の総指揮を担うために、はじめの場所に残っている。
けれども、不思議に思った。第三隊の副隊長は、あまり前に出ないタイプの人だ。なにせ、衛生隊だし。
こういう時って、第五の隊長のほうがやるよな。
それに、出発したときのままで交代した様子がないのも不思議だった。
そう思っていたら先に、第五の隊長は事故から目が覚めたばかりで、状況把握がきちんとできていないことを理由に、自ら辞退したと、説明があった。
うん。ならば第七以降より、昨日も治療に駆け回っていた第三の副隊長がいい。
先ずは、状況説明からだった。
あれから、王子率いる奇数隊は、洞窟の罠を解除しながら進んでいた。
が、半日と少し進んだあたりで、大規模な罠……もしくは、落盤事故が起こったらしい。
後続の12名が、その際に脱落し、他にもたくさんの怪我人が出た。王子は、いつもと違いわりと前進ぎみで、無事だったらしい。
これにより、それまでに来た道が完全に塞がれ、全員が前進するしかなくなった。
一日かけて、怪我人を応急措置したあと出発。
それからも、非情な罠が続き、道中で4人が脱落した。
この説明の時に、多数の人が、悔しそうな顔やしぐさをした。
……そりゃそうだよな。怪我をしながらも運んだ仲間を、目の前で亡くしたら。
そう、思ったのだが、それは断ち切られた。
「いやいや、ここにバカ王子はいないんだ。もっと正直に言いましょうよ。あいつらは、王子が殺したんだって」
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