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第48話

歓声を上げ、お互いを称え、喜びあう人の中、俺は押さえることなく、涙を流していた。 彼らは皆、彼を人型モンスターの一種のように思っていたに違いない。 けれど俺は知っている。彼は人間だった。 紛れもない人間で、だけど望んで殺したのだと、俺だけが知っていた。 いや。 ラルドを見る。 彼に、実際に止めを刺した一人。 彼も、喜びの輪の中には入らず、ただ、王子が佇んでいた辺りに向けて、祈りを捧げていた。 「殺して、あげなければならないのです」 彼の言葉がよみがえる。 「闇の力に狂ってしまった人間は、周りを破壊しようとします。モノだけでなく、人も。彼の命は残り少ないですが、それでも、そこまでに犠牲者が出るでしょう」 二人きりで、広場に佇む王子のなれの果てを、確認しに来た時のことだ。 広場を見ながら俺は、ポツリと溢した。 「あのまま、動かないなんてことは?」 ただの願望に、ラルドは丁寧に答えてくれた。 「いいえ、一気に力を暴走させて、硬直しているだけですよ。あと半日あれば、回復します。命が残り少ないとはいえ、あと一日もたないという訳ではないのです」 辛そうな横顔に、手を伸ばす。 「よく……知ってるな」 「こういう事態に出合うのには、慣れています」 苦悶に耐えるラルドは、泣いていないのに泣いているみたいだった。 「闇の魔力が恐れられるのは、こういうことが起こるからなんです。つい先日まで、穏やかに話していた人間が、化け物のような姿になって周囲を破壊しはじめる。それを考えると、確かにあれは、伝説で恐れられる『凶王』そのものでしょう」 自虐するように語るラルドは、痛々しくて。 闇の力を持つ者たちの村でも、突然人が狂う、なんてこともあったのだろうか。 それに思い至り、眉を寄せる。 抱き締めたくて、仕方がなかった。 「でも、闇の力を持つ人は、穏やかな、優しい気質の人が多いのですよ。破壊なんて望まない。だから止めてあげなくては」 「……そして、止める方法はひとつ、なんだな……」 「そういう訳です」 我慢できずに引き寄せて、唇を奪うと、やっとラルドが涙を溢した。 あまりに綺麗で、言葉がそれ以上出てこなかったのを覚えている。 祈るラルドも、その時のように綺麗だった。 歓喜する周囲の中で、俺とラルドだけが彼の冥福を祈った。  

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