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第49話
※印をつけるほどではないけれど、ちょっと血なまぐさい話も出ます。
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「みんなよくやってくれた!」
第五隊長の演説は、広場から少し進んだところにある、道幅が他より少し広めの、曲がり角で行われた。
戻った岩場より、血の臭いが薄いからだ。
ここで、皆休息のための寝床を作り、簡単な調理をして、腹を満たしていた。
改めて広場の様子を見て、何人かが気分を悪くしてしまったので、血の臭いが立ち込める岩場では休めないと判断した上でのこの場所だ。
「当初の目的は、崇高なる犠牲のもとになされた。まずは、王子と近衛騎士、そして我らが同士たちに、改めて哀悼を捧げよう」
このあと、交代で見張りをしながら、彼らを埋葬して、遺品を持ち帰る。
この中には、すでに発見された、王子のイヤリングと剣も含まれる。
イヤリングは近衛騎士たちの側に、剣は鞘に入ったまま、壁際に転がっていた。
「そして、『凶王』という、強大な敵を討伐した英雄に拍手を!」
ワァ! という盛り上がりと共に、拍手を送られるのは、ただ一人残った、エドアルド・サパテルという名の近衛騎士だった。
そう、あの首をとった彼が、このたびの英雄として、名を刻まれることになったのだ。
「何を申される。私はたまたま、その役を仰せつかっただけ。真の英雄は、指揮したロビン・グルーコック隊長と、光の魔導士、シュメルダ様ではないか」
騎士は、まんざらでもない顔でそう返す。
その言葉に笑いと、拍手が送られる。
きっと、のちの歴史書には、この3人の名が書かれるのだろうと、そういう場面に立ち会える光栄に、皆が酔いしれていた。
それに対して、寂しく思いながら、ラルドを見る。
彼は、まるで親衛隊のようになった兵たちに、椅子を進められて、取り囲まれていた。
そこは、きらびやかな光に包まれているように見えて、俺とは住む世界が違うのだと、見せつけられているようだった。
「よう、悪友 」
「……カールか」
そんな俺に近づいてきたのは、その英雄様がたと共に、止めを担った一人である、カールだった。
二人がかりで、胴をないだのはこいつだ。
「おいおい、どうした。勝利の宴だぞ」
「……ああ」
こいつも、あの光の当たる場所の住人なのだと思うと、凹んだ。
そう思うと、こいつの回りにも、あのキラキラとした光があるように見えてしまう。
俺は……俺だけが、暗闇に取り残された気がした。
「お前はいいよな……あの第五隊長の腹心の一人だ」
ため息をつくと、カールは変な顔をして、俺のとなりに座った。
「お前にだって、普通に報奨が出るだろうが」
「報奨の話じゃねぇよ」
頬を膨らませると、今度はカールがため息を吐いた。
なんだよ。お前のキラキラした才能と、俺のを一緒にするんじゃねぇ。
すると、思わぬ話になった。
「……言っとくけど、お前にだって、昇進の話は来てただろ」
「は?」
は? 昇進?
いつの話?
「それを、「前線部隊は嫌だ」なんていう理由で蹴ってただろうが。じゃなきゃ、第五は無理でも一桁部隊のどこかには居たろ」
……。言われて思い出す。隊長が、もし一桁部隊に入れたらどうすると、聞いてきたことがあった。
俺は、そんなのは夢だと思っていたし、やる気もなかったので、確かにそう答えた。
まさか、本当に?
「十九隊隊長が、スカウトしようと狙ってるみたいだしな。あそこは斥候部隊だ。足の早さが目についたんだろうなー」
「おいおいおい」
待て待て。知ってるぞ。斥候部隊って、一番危険で、一番重要な、ブラック部隊だろ。嫌だ。それだけは嫌だ。
「ま、その他にも狙ってる隊長はいるからな。一番槍で目立った自覚しろ」
「うわぁ~」
そ れ か 。
ラルドに、良いところを見せたくて、それ以上に、彼を危険にさらしたくなくて、張り切りすぎた。
いやいや、いつもあんなことができる、才能溢れた兵じゃないですから。ただの凡兵ですから。
「まぁ、そうじゃなくても、アレ。持って帰れば、俺たちみんな英雄扱いだからな。普通に酒場でモテるようになるさ」
「……」
酒場で、モテる。
この洞窟にやって来るまでなら、とんでもなく魅力的だった言葉に、全く魅力を感じない俺に、戦いた。
その様子をどう思ったのか、カールは笑って干し肉をかじり裂いた。
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