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第50話(※残酷描写注意)
※
人死、残酷な表現があります。
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洞窟の入り口に続く最初の広場は、歓声でいっぱいになっていた。
宴のあと、床につき、仮眠をとったあとに、目が覚めた俺たちが見たのは、この広場で待っているはずの、彼らの姿だった。
聞けば、入り口のここまで、微かに俺たちの雄叫びが聞こえてきたそうである。
そのために様子を見に来た彼らと、無事再開を果たした俺たちは、入り口広場に戻ってきたあと、お互いの情報を交換した。
「まさか、本当に『凶王』を倒すとはな」
第3軍軍隊長、ボドイット・オスカリウスは、自分の顎を擦る。
その目線の先には小袋。
この中にある『凶王』の首は、死んでも王子の優美な顔には戻らなかった。濁った目は、王子の美しい青い瞳には重ならない。
オスカリウス隊長は、熟考するように目を閉じると、しばらくして、前に立つ人たちに目を向けた。
「貴殿方の豪勇に、讚美と感謝を申し上げる。まさに英雄の名に相応しい」
そう言って頭を下げると、今度は、我々が洞窟を進んだあとの話をしてくれた。
王子が洞窟に入って、丸一日が過ぎた頃、王子の入った側の道から、転がるように6人の兵が逃げ出してきた。一人の近衛騎士と、班はバラバラの平兵士である。
何があったのか聞いてみれば、道が崩れて寸断されたという。
慌てて確かめに行ってみれば、半日程行った辺りで、洞窟が完全に埋まっていた。
何人かが生き埋めになったというので、救出作業をしたが、3人を掘り出した辺りで瓦礫が崩れ、安全が確保できず、以降の作業を断念した。掘り出された3人は、すべて事切れていた。
辛うじて、道が崩れてすぐに、叫んでみれば向こう側と会話でき、王子の無事は伝えられていたため、このまま待つ、ということになった。
だが、別の騒動が起こる。
念のために、王国軍の本軍に救援を乞うため、連絡をとると、王城では、大変なことが起こっていた。
「王がお亡くなりになられた」
「……!!」
「それどころではない。王族のほとんどが、次々と不審な亡くなりかたをされたのだ」
「っ……なんと」
王を始め、王弟や王太子、王子王女までが次々と倒れ、王の従姉妹であった妃までもが倒れたという。
しかも、その死に様は、突然苦しんだかと思えば、硬直したかのように倒れてそのままの王太子は、まだましな方で、立ったまま、火もないのに焼け焦げたように真っ黒になってしまった者や、枯れ木のようになってしまった者、黒い灰のようになってしまった者や、倒れてすぐに腐ってしまった者など、とてつもなく恐ろしくおぞましい死に方ばかりで、王城はパニックに陥ったという。
直系で、死を免れたのは、第二王子と、第一、まだ幼い第五王女だけだという。第二妃は他国の姫で、直系とは言えないため、省く。
第二王子の采配で、パニックは治まりつつあるが、王国軍を動かすことはならず、なんとしてでも無事に第三王子を連れ帰るように、という伝達だけが帰ってきた。
それを聞いて、オスカリウス隊長は第三軍の残ったうちの半数を王城に戻し、自らは第三王子を出迎えるために、残っていたという。
いつの間にか、歓喜に沸いていたはずの広場は、しんと静まりかえっていた。
第三王子・アット=ヨーハン・テングストレームは、名誉の戦死である。
ある意味、首だけは連れ帰られるのだが。
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