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第52話
その後、俺は次期王を前に自己紹介させられ、今回の功績を聞かれた。
凶王を取り囲んだ一兵だ、と言ったら、第五班長が、取り囲んだ後の最初の襲撃で、急先鋒をとった者で、背に打撃を与えて英雄の補助を担った、などと追加した。
更にラルドが、それだけではなく、凶王を封印した場に立ち会い、自分を救出してくれた恩人なのだと言うと、王は納得して、俺を大魔導士の側仕えにするよう、命じた。
つまり、まさかの、本当に、報奨『俺』である。
魂を飛ばしている間に、王からラルドへ、国が落ち着くまでの間だけでいいので、助けてくれないかという要請がされ、自分もこの時代を把握したいので、その間であればと、受諾したらしい。
王から要請されて、雇われるというのは、報奨として召し上げられるのとは、全く立場が違う。
すでに中枢のお偉い方は、彼を警戒対象にしたらしいとかなんとか。
まぁ、そんなことはさておき、俺だ。
第三軍への報奨は、もちろん受け取った。
全員に金一封である。めちゃ太っ腹。
しかも、凶王討伐の功績で上乗せなので、滅多にない大金になった。どこかの誰かが、一晩で使い果たしたと聞いて、耳を疑った額だ。
使い果たすなど、とんでもない。
俺は、四分の一ほど残して、出身の孤児院に送った。ちょっとでも、ちびの飯になるといい。
残りで、ちょっとした贅沢をしたいと思っていたら、呼び出しを受けた。
曰く、大魔導士 の側仕えになるのだから、護衛としても、侍従としても、役に立つ者になるように、とのこと。
なんだそりゃ。
だが、俺の意思云々は、考慮されず、そのまま一層激しい訓練と、よくわからん座学に明け暮れることとなった。
泣きそうだった。
ラルドが謝ってくれ、会うたびに、痛いところがないかと心配し、癒してくれ、愛を囁き、甘い時間を過ごしてくれなければ、折れていたかもしれない。
もうこうなったらと振り切れて、俺は、完璧な侍従になってやる、と猛勉強した。
実際、ラルドの所作は完璧で、教養から何から、上流だとわかってしまう。
その人の傍にいるためだと思うと、尚更諦められなかった。
なんというか。
流れがどうだとかいうものの、実際願えば大抵のものは与えられていたであろう場所で、願ったのが、金銀財宝ではなく、身辺の自由でもなく、俺だったのだ。
凶王 に対する疑いは、もう、きれいさっぱり消えてしまった。
そうなると、もう、抑えが利かない。
欲しくて欲しくて堪らなくなり、あの、キラキラしたオーラを纏い、信徒をたくさん従えて、敬われ、尊じられるのが当然といった様相の彼の、傍にいても、当然、な俺でいるためには、とますます自分磨きに身が入った。
マナーやお偉い方の顔と名前、周辺各国の情勢まで、ガッツリ覚え込み、その上で、彼の身辺警護を一手に担えるよう、訓練を積む。
王城暗部部隊によるレッスンが、一番水にあったのは解せないが、まぁ、陰ながら彼を守るという立ち位置はぴったりなので、ガッツリ習得した。
そうして二ヶ月。
俺は、正式に『光の大魔導士』の側仕えとして王城に召し上げられた。
もうすでに、王城の片隅に部屋を与えられ、ほぼ毎日一度は、ラルドに会っていたので今さらではあるが、これからは今までと比べ物にならないほど、傍にいられる時間が長い。
「これから、末永くよろしくお願いいたします、ご主人様」
「こちらこそ、いつまでも傍にいてくださいね、ウォガリス・エイリ」
丁寧な、正式の挨拶をしたあと、俺たちは抱き合い口唇を合わせた。
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