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第2話
「あ、うん、メガネ、壊れちゃって」
なんでもっと気の利いた事とか言えないのかな?
トオルは彼がどう反応してくれるかドキドキしていた。
これを気に仲良くなれるかも!そんな淡い期待さえ芽生えてくる。
「そうですか。…………これ、借りたいんですけど」
仲良くなれる期待は本当に淡く消えてしまったようだ。
いつも通りの業務的な会話で終了。
でも、でもさ!俺がメガネしてるって覚えててくれたんだよな?
毎日会うから覚えるだろうけど、けれど彼はいつも俯いていて、顔を上げた事がなかった。
業務的な会話をするだけ。
もしかしたら顔さえ覚えてくれていないかも。なんて思っていたから嬉しい。
こんなささいな事で心が舞い上がるんだな……トオルは上機嫌で家へと帰った。
家に着くと直ぐにメガネを作りに母親と出掛けた。
月曜日、俺がメガネして行ったら「メガネなおったんですね」って会話できるかな?
また、そんな淡い期待を抱いてしまう。
◆◆◆◆
しかし、世の中はそう甘くなくて、月曜の放課後……彼は来なかった。
用事とかあったのかな?
前向きに考えて、次の日………その日も姿を現さなかった彼。
あんなに毎日来ていた子が2日来ないってもかして何かあった?
病気とか?
学年が違うから校舎も違う。
1年生は離れた校舎。用事もなく行くのもなあ。
明日、明日は来るかも………そう思っていたのに、1週間………姿を見る事がなかった。
あれ?なんで?
あ、本の期限あるじゃん!本の期限っていつだっけ?
貸し出し用のファイルを出す。
本のタイトルを探しだすと。
なんと、昨日戻ってきていた。
えええっ??まじでええええ!!
昨日、俺居たのに。
トオルはガクンと受付の机に顔を伏せた。
「神林どーしたん?」
同じ係の男子生徒に声をかけられ、顔を上げる。
「なあ、この本、昨日戻ってきてたんだな?」
彼が借りた本を指差す。
「あ、これは昼休みに戻ってきた本だよ」
昼休み?
あ、しまった!!
図書室って昼休みも開放してある。
迂闊だった。
昼休みも来てたかも知れない!!
え〜!!何だよそれは!!
さらにガクンとチカラを落とす。
くそ!じゃあ、昼休みも図書室に張り込む?
いやいや、ストーカーか俺は!!
でも、昨日来てたって事は病気とかじゃないんだな。
良かった。
◆◆◆◆◆
放課後、トオルは先生に無理やり花壇の手伝いを頼まれた。
クソ!クソ!
あの子来てるかも知れないのに。
花に水なんか………文句を言いながらふと、花壇が1年の校舎に近いと気づいた。
そして、何気に出入り口に視線をむけた。
ちょうど彼が出てきた所だった。
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