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第3話
えっ、ええっ!!
いきなりで少しテンパるトオル。
こ、声とかかけていいかな?
最近来ないね?とか、色々、色々あんじゃん……だんだん近付いてくる彼に心拍数が上がる。
こんなにドキドキしたのは久しぶり。
もう少しで……すれ違う距離まできた。
声、声かけなきゃ!!
そう思った瞬間。
「あぶない!!」
と遠くから声がきこえ、バシンっ!!と大きな音がした。
なに?
トオルは何が起こったかわからなかった。
そして、足元に転がるサッカーボール。
「大丈夫?」
直ぐ近くで彼の声がして、驚いてサッカーボールから千尋へと視線を向けた。
大丈夫って何が?
トオルには何がなんだかわからなくて、千尋を見つめていた。
綺麗な顔立ち。
女子が騒ぐのもわかる。
綺麗な顔立ちに幼さが残ってて、つい、見惚れてしまう。
「ごめーん、大丈夫?」
知った声がして、我に返って振り返る。
声の主は同じクラスの子。
「神林、ボール当たんなかった?」
「えっ?」
ボール?ボールってなに?
状況が把握できない。
「えっと、1年だっけ、そっちも大丈夫?」
「はい。大丈夫です。それじゃあ」
千尋は頭を下げると校門に向かって歩いて行った。
ああ!!やっぱ!帰っちゃうの?
トオルはガッカリした。
「でも、凄かったなアイツ」
「へ?」
友達の言葉にきょとん。
「俺が蹴ったボールがこっち飛んできてさ、あっ!当たるって思った瞬間にアイツが片手でボール弾いたんだよ。すげえ、反射」
友達はそういうと、転がるボールを拾う。
えっ?えっ?
じゃあ、あの大きな音はボールを手で弾いた音?
「アイツ、サッカー部入ってくんないかな?部員足んないだ……神林でもいいけど?お前、運動神経いいじゃん、1年の時はバスケやってたし、どう?」
「えっ?サッカー?」
「お前とあの1年入ってくれたら結構試合でいいとこまでいけそーじゃん?うち、弱小校だから」
友達は本気なのか冗談なのか、そんな事を言って、部活へ戻っていった。
神林の頭の中は千尋でいっぱいだった。
ボール………弾いてくれた。
うそ!!まじ?
ジワジワと嬉しさがこみ上げてくる。
自分を助けてくれた事にかなり興奮していた。
あした!明日、話せるキッカケができた!
お礼を言おう。
ちゃんと言えてなかったもん。
話す理由ができて、トオルは上機嫌で花壇の手入れを始めた。
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