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第6話
◆◆◆◆
「お兄ちゃん気持ち悪い」
夕食中、弟に言われた。
「何かいい事あったの?」
母親も聞いてきたが、嬉しい理由は言わなかった。言ったら馬鹿にされそうだし、勿体ない気がして。
「ご飯食べたら遊んでえ」
4歳の弟がまとわりついてきた。
彼にはお兄ちゃん気持ち悪いと言った弟、10歳、6歳、4歳と居て賑やかだ。
面倒見が良いので弟達は全員、懐いている。
「お風呂入ったらな」
そう言うと4歳の弟はお風呂入る!!と母親にせがんでいた。
今日は機嫌が良いから何でも聞いてやれる気がした。
あ!!!体操服洗わなきゃ!!!
借りた体操服を洗うのを忘れていて、慌てて食事を済ませた。
「お母さん、洗濯機使っていい?」
「いいわよ、洗濯物あるなら出せばいいのに」
「自分で洗うからいい」
そう!自分で洗いたい。本当は洗わずこのまま……って変態か俺は!!!と悶えるトオル。
そして、明日から気兼ねなく話せる事も凄く嬉しい。
◆◆◆◆
放課後、体操服を持って図書室へ。
毎日、彼を探して見つめる……それが今日からは違う。自分だけが思っているかも知れないけれど、「友達」
友達に昇格した気持ちだった。
千尋が何時ものように図書室にやって来た。トオルに直ぐに気付いて微笑む。
わ、笑うと可愛い……
「に、西島くん」
借りていた体操服を鞄から取り出す。
「千尋でいいよ」
「えっ?」
「そっちは?神林くん?それとも先輩?」
千尋はトオルの目の前に立つ。
座っているトオルを見下ろす感じになって、なんか……いつものドキドキが違うドキドキへと変わっていく。
「あ、あのトオルでいいよ」
「うん、分かったトオル」
トオル……。
名前を呼ばれただけなのにドキドキがずっととまらなくて、口から心臓が出そうで……もう、なんだろう?嬉しいが100倍押し寄せた感じだった。
その日、何を話したかよく覚えていない。
でも、ちゃんと体操服は返せた。
それだけは覚えている。
◆◆◆
それから花壇の水やりも彼が来てくれるようになった。花を楽しそうに見る姿がこれまた可愛いのだ。
綺麗だと思った顔が幼さが残る可愛い顔だと思うようになってきた。
でも、ふと彼がいつも1人なのが気になった。
あれ?同級生とかと一緒に居る所みなくない?
昼休みにはトオルと一緒に居てお弁当を持ってくる事もあり、花壇の横で一緒に食べた。
移動教室の時に見かけた事があったけど、1人で歩いていた。他は数人と一緒だったりするのに。
ま、まさかイジメ?
トオルはかなり気になってしまった。
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