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15年前 #1 side Y

15年前の夏、親父が盲腸炎で入院した。母親から毎日、一緒に病院へ行くように頼まれた俺は、母親には申し訳ないが、それが苦痛で仕方なかった。病院での時間は、とにかく退屈だった。俺は10歳になったばかりだったから、そう思っても仕方あるまい。 病室に着くと、親父が 「よっ!」 とベットから手を上げた。 「何だよ~元気そうじゃん!俺が来なければならない要素ゼロじゃん!」 「そう言うなよ~飯も食えないしさ...とにかく退屈でさぁ、こうして誰か来てくれないとつまらないんだよ。」 「じゃあ、兄ちゃんが来たっていいじゃないか?」 「兄ちゃんは、受験生だからな。大事な時期に、親のわがままに付き合わせるのも悪いし、それにお前が家にいたら、うるさくて勉強どころじゃないだろう?」 「ちぇっ!何だよ。本来の目的はそっちかよ~」 「まあまあ、お前が来てくれて、本当に嬉しいよ。ありがとな。葉祐。」 (そんな嬉しそうな顔したらさ、嫌って言えないじゃん...) 「母さんが来たらさ、ちょっとだけ病院の探検に行っても良い?」 「あぁ。迷惑にならないようにしろよ!」 「うん。分かってる!」 ナースステーションから戻った母さんと入れ替えに、俺は病院の探検と称して、病室の脱出に成功した。さほど大きくもない建物内をうろうろして、中庭に出た時、花壇の中で眠る一人の男の子を見付けた。それが冬真君だった。 そう、これが俺達二人の最初の出会いだった。

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