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決心 #2 side T
温かい...
温かくて...心地良くて...どうして...?
背中に何か当たってる...手...?
ああ...そう言えば...葉祐君が言ったんだ...『抱き締めてやるよ』って。昨日、色々な事があり過ぎて...もう...自分自身を支えきれなかった。だから...思い切って...葉祐君の胸に飛び込んだ...
抱き締めてもらうと...こんなにふわふわとした...優しい気持ちになるんだね...
ダメだ...離れなくっちゃ...葉祐君はずっと一緒にいてくれるワケじゃない...あの頃とは違うんだ...苦しくなる前に...離れなくっちゃ...
でも...今だけ...今だけ...いいかな...?あの頃みたいに...そばにいてもらってもいい...?ちょっとだけ...期待してもいい...?
「葉祐君...」
「うん?」
「いるね...?」
「うん。」
葉祐君...いてくれた...そばにいてくれてありがとう。ごめんね...もう少し...もう少しだけ眠らせて。この気持ち...この感覚を忘れたくないんだ...ずっと覚えていたいんだ。この先苦しいことがあっても...この思い出だけで...少しは頑張れそうだから...
次に目が覚めた時には、俺も葉祐君も元通り。身仕度をして、ホテルの朝食を食べ、チェックアウトの手続きに行くと、フロントに西田さんの姿はなかった。別のフロント係の男性が、
「弊社の西田より、海野様にお渡しするよう申し使っております。」
と言って、ホテルの名前の入った封筒を差し出した。手続き後に封筒を開けると、紙が1枚入っていて、そこには西田さんの連絡先が書いてあり、『必ず連絡するように。』と書かれていた。二人で連絡先を入力し、お礼のメールを送った。
「さぁて。家まで送って行くよ!」
「えっ?」
「また倒れたら大変だろ?」
「ありがとう...」
「帰るまでに絹枝さんに会えるといいんだけどなぁ…」
「うん...」
「バスの時刻表確認して、次に荷物をロッカーに預けて、新幹線のチケット買わないと。どっちみち駅だな。」
「うん...」
また別れの時が近づいている...
キャリーバッグを引いた葉祐君の後に続いて駅まで歩いた。コインロッカーの前に着いた時、何故か西田さんの顔が頭に浮かんだ。
俺の運命...期待も願望も持ってもいいって言ってくれた...
もう少し...そばにいたい...
俺の細やかな願望...持ってもいいかな...?
「あのさ...」
「うん?」
「葉祐君...会社...いつから...?」
「明後日。」
「あのさ...良かったら...うちに来ない...?」
「えっ?」
「うっ...うちに泊まれば...絶対に...絹枝さんに会えるでしょ?だから...」
今まで生きてきて数えるほどしか口にしていない自分の願望。返事を聞くのが怖くなって...俺はただ俯くことしか出来なかった...
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