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不思議な気持ち side Y

両目をぎゅっと閉じて、俯いたままの冬真は、耳まで真っ赤で...そんな冬真を俺は、何とも言えない不思議な気持ちで見ていた。 「なぁ?冬真?」 「......」 冬真は返事をしなかった。 「なぁ?冬真?」 今度は顔を覗き込んで呼ぶと、冬真はおそるおそる片目だけを開いて、やっと『うん?』と返事をした。俺の不思議な気持ちは、更に複雑さを増し、更にスッキリしないモヤモヤした物になった。それでも、子供の様な素振りを見せる冬真がおかしくて、思わず笑ってしまう。 「なぁ?冬真はさ、カレーとナポリタンだったら、どっちが好き?」 「えっ?」 「カレーとナポリタンだよ。どっち?」 「どちらかと言えば...カレーかな...」 「じゃあ、晩御飯はカレーに決まりな!」 「えっ?来て...くれるの...?」 「招待してくれるんだろ?」 「うっ...うん...。」 「だったら、晩メシ作らなくちゃだろ?」 「うん。」 冬真の表情はみるみるうちに、ぱぁっと明るくなっていき、その笑顔とは裏腹に俺の気持ちは増々複雑になり、モヤモヤし、自分の気持ちがよく解らなくなった。そして、俺は考えることを放棄した。 俺はもう少し冬真のそばにいてやりたくて、冬真もそれを望んでる。それだけの話。今はその事だけ考えよう...冬真を喜ばせてやろう... それから、二人で駅の反対側にある大型スーパーへ向かった。ここは週に1度のカルチャーセンターの仕事の後に必ず寄り、1週間分の買い物をするのだという。俺と交差点で再会したときも、ここに向かう途中だったと教えてくれた。俺が荷物をロッカーに入れる間、冬真は少し先の円形に配置されたベンチで待っていると言った。キャリーバッグが入るような大型のロッカーがなかなか見当たらず、荷物を収納するのに想像以上の時間を要してしまった。急いでベンチに向かい、冬真が視界に入ったところで、俺は思わず立ち止まってしまった。細身のブラックジーンズに白いシャツを身に纏っただけの冬真が、あまりにも綺麗で...色気が溢れ出ていて、その場所で一人、異彩を放っていたから... ベンチの周辺はざわついていて、ほとんどの人が冬真を見ていた。女子高生らしき集団なんて『きゃあきゃあ』騒いでいる始末...当の本人は物思いに耽っているのか、ギャラリーには全く気が付いていない。 (ヤバい!危ない!マズい!) 俺は焦った。慌てて冬真を呼ぶと、冬真は俺に小さく手を振りながら立ち上がった。それと同時に、ギャラリーは冬真から視線を外した。 あーあ...気が付いちゃったよ...俺... 『ヤバい!危ない!マズい!』なんて思ったのも...さっきから複雑化している不思議な自分の気持ちも... そう...俺は...冬真が愛しくてたまらないんだ。俺だけの冬真でいてほしいんだ。昨日...俺の中で芽生えた愛は...こういうことだったのか... 「葉祐君...?」 「あっ?なっ...何...?」 「どうしたの?」 「べっ...別に...」 「何か...ごめんね...」 「何が?」 「疲れてるよね...ギリギリまでこっちにいるんじゃ...体...休めること出来ないね...」 「あのさ、知ってる?ここと東京、意外と近いんだぜ?気にするような事じゃないよ。」 「うん。ありがとう...あっ...あのさ...」 「うん?」 「葉祐君のカレー...すごく楽しみ...」 冬真はそう言って、小さく笑った。 もう.....人の気も知らないで... 何でそんなに綺麗なんだよ... 何でそんなに可愛いんだよ... キス...したくなっちゃうじゃん...

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