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違和感 #1 side Y

カレーも出来上がり、一息つこうとコーヒーを淹れた。寝室と同様、リビングを見渡した。お祖父さんが所有していたというこの別荘は、その時の名残なのか、独り暮らしにはあまりにも広すぎる。ほとんど外出しないであろう冬真は、ここで何度となく寂しい時を過ごしたことだろう。かと言って、都会で暮らせるほど器用でもなく、それに対応出来るほどの気力も持ち合わせていない。 食器類を準備しておこうと、食器棚に手をかけた。お祖父さんがいた頃は、ここには高級な食器類がずらりと並んでいたであろう。だが今は、食器棚の機能を果たしているのか疑問に感じるぐらい何も入ってなかった。しかも、白で統一されているものの、食器類のほとんどがメラミン樹脂製の物で、そのことに、何となく違和感を感じた。よくよく考えてみれば、この家は違和感だらけだ。お祖父さんの所有物だった割りには、新しいし、寝室のダブルベッドも独り暮らしにしては不釣り合いだ。 冬真が眠りに就いて、1時間以上の時間が過ぎていた。ソファーに近付き、覗いてみると、冬真はまだ眠っていた。よく眠っているので、何となく気が引けるが、これ以上眠ると、夜に支障が出るだろう。心を鬼にして、 「冬真...そろそろ起きて。今、起きないと、夜眠れなくなっちゃうよ。」 「ん.....」 冬真はうっすらと目を開けて、朧気にこちらを見つめた。そして、冬真の瞳から一つ大きな涙ががこぼれ落ちた。俺は慌てて、 「どうした?」 と言い、冬真の体をゆっくりと起こし、左腕で彼を支えた。 「大丈夫か?」 「うん......」 ティッシュで涙を拭ってやった。 「本当に大丈夫?」 「うん.....ただ.....」 「ただ?」 「夢じゃなかった......って思って.......」 俺の目の前で朧気に微笑む、この愛おしい存在は、色々な意味で繊細で...危うくて...脆くて... しっかり抱き締めてやらないと...今にも消えてしまいそうなほど儚い... 俺は冬真を抱き締めた。 「大丈夫...夢なんかじゃないよ...そばにいるよ...」 そう言うと、 「温かい.......」 と冬真はぽつりと呟いた。

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