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異変 #3 side Y

絹枝さんが言った通り、冬真が倒れた原因は貧血で、点滴終了後、帰宅許可が降りた。病室で冬真に付き添っていると、天城医師から二人だけで話をしたいと言われ、会議室らしき場所に通された。着席を促されたところで、天城医師が切り出した。 「葉祐君、早速なんだが...」   「はい。」 「冬真と会うのは...もう辞めた方がいい...」 「えっ?」 「冬真とガラスの因果関係は聞いたかい?」 「詳しくは聞いてません...ただ...ガラスの割れる音や割れたガラスの破片に恐怖心があると言うことは知っています。」 「フラッシュバックが起こるんだ...母親に殺されそうになった時の...今回の様に倒れてしまう時もあれば、ずっと小さくなりながら震えて運ばれる時もある...睡眠時遊行症...あぁ...いわゆる夢遊病ってやつね...その症状が出る時もある...あの子は体にも心にも爆弾を抱えてるんだ。中途半端に同情してしまうと、あの子の抱えてる物や問題が、そのうち、君に大きくのし掛かって来るはずだ...君が彼を支えきれなくなってしまった時...このままだと、簡単に身を引きづらくなってしまうよ?そして、彼の手を離さなければならなくなった時...君を失った彼は...母親と同様に...心を壊すだろう...そうなったら、君の心にも影を落とすし、冬真のダメージは...はかりしれない...君のためにも、冬真のためにも、私は二人は会わない方がいいと思うんだ...勿論、叔父として、君には感謝しているよ。君と再会してからの冬真は、少しだけ自分の気持ち吐露出来るようになったし...表情も柔らかくなった...本当に感謝している。だからこそ、君には負担を掛けたくないんだよ...」 「ご心配ありがとうございます。あの...俺の考えも話していいですか?」 「あぁ...勿論。」 「都合良く考えすぎって叱られそうだけど...先生、冬真君の寝室はご覧になりましたよね?」 「うん。あれは...酷かったね...」 「ああいうのは、初めてだとか...」 「そうだね。」 「俺...電話でいつも言ってました...『メシ、ちゃんと食えよ』って...冬真君は俺の言葉を必死に守ろうとしたんです。でも、気持ちとは裏腹に体が受け付けない...口に出来る物を何とか探そうとして、あんな状態になってしまったと思うんです。それに散乱していた服...あれは全部、俺のTシャツでした。俺を身近に感じることで、この状態を何とか乗り切ろうと、一人で頑張っていた様な気がして仕方ありません...あれらは、過去や諦めの中で生きてきて、『死』ばかりを見つめてきた冬真が...一生懸命足掻いて、前を向いて生きようとした証拠だと思うんです。」 「......」 「突然、こんなこと言って恐縮ですが...俺...冬真君のこと大切に思っています。心底愛おしいです。絶対に幸せにしようって考えています。もっと笑顔を増やして...その笑顔を守りたいって思ってます。男同士で何を考えているんだ...と思われるかもしれません...覚悟は出来ています。ただ理解して欲しいのは...俺に元々、そういう性癖があったワケではなくて、自分の一生を掛けて守りたいと思った相手が現れて、それが冬真君で、たまたま男だっただけ...それだけは...分かって欲しいです...すみません...こんなこと...急に言ったりして...」 「いや...むしろ感心してるよ。随分堂々と言えるんだなぁ...と思って...」 「お身内の方にとっては複雑ですよね...」 「いいんだ...実はね...」 そう言って、天城医師は白衣のポケットに手を突っ込んで、何かを取り出した。

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