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心の闇 #1 side Y

冬真の寝顔を見ていた... 意外なところから、手術後の様子とフラッシュバックを起こした要因を聞いた。 家が殺風景だと思った冬真... 俺のために花を飾ろうとした冬真... ガラス製の花瓶を見て、恐怖心を抱きつつも、勇気を出して、それを手に取った。しかし、何らかの理由で割ってしまった時の、冬真の気持ちを考えると本当に切なかった。恐怖心と戦い、震える体を奮い立たせ、俺の言葉を守ろうと家中の食物を手当たり次第口に入れるが、体が受け付けず、吐き出し続ける...どんなにツラくて怖かっただろう。安心したくて...俺を求めるように、クローゼットから俺のTシャツを引っ張り出した。少しは安心出来たのかな...真鍋さんは冬真のことを『頑張り屋さん』と称した。 本当だな...冬真......お前...頑張り過ぎなんだよ...いつでも...何でも一人で抱えすぎなんだよ... 項垂れていると、冬真が目を覚ました。 「冬真?」 冬真を見ると、視点は宙を見つめ、意識がはっきりしていないのが分かる。ふらふらと立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。寝室を出て、壁をつたいながら歩く。 「冬真?大丈夫?」 冬真の肩に乗せた俺の手を払いのけ、冬真は構わず歩き続ける。冬真には俺の声が届いていないようだった。 冬真はそのまま、ふらふらとリビングに入り、キッチンに向かった。冷蔵庫の前で止まり、扉をおもむろに開け、中身を物色していた。 「何か...何か...食べ...なくちゃ...」 と小さな声で呟いた。冬真の意識はまだはっきりしていない。ならば、否定的な言動は控えた方が良い...漠然と感じた。だから、 「どうして?」 背後から穏やかに聞いてみた。 「食べ...なくちゃ...診療所...行ったら...嫌われる...面倒...呆れる...もう...来ない...」 「誰が?」 「葉祐......一番...大切...」 「そっか...でもね、さっき、たくさん食べてたから...大丈夫だよ...それより...もう少し...休んだら...?」 俺は小さな嘘をついた... 「う...ん...」 冬真はまた、ふらふらと立ち上がり、リビングを出て行った。俺は後ろからゆっくり着いて行く。冬真は寝室に戻り、再度、ベッドで眠りに就いた。冬真の肩が隠れるぐらい布団を掛けてやった。 顔を覗くと、冬真は安心したような穏やかな寝顔をしていた。冬真の寝顔とは裏腹に、俺の心は焦っていた。冬真の心の闇が...想像以上に深くて暗いことを俺は改めて痛感した。 何か手を打たなければ...と。

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