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打診 #2 side Dr.A
「冬真を抱けるかい?」
私の質問に対し、葉祐君は予想に反し、黙りこんでしまった。
誠実な男だ。今日までの行動を見て、冬真とのことは遊びでないことは分かってる。では何故...黙っているのだろう。
「あの.....」
「何だい?」
「先生を...どういう位置付けで考えて、お話しすれば良いのでしょうか?」
そうか...私は冬真の主治医でもあるが、身内でもある。同性同士の恋愛だ。身内が聞けば嫌悪を感じるかもしれないと、気を遣ってくれているのか...
葉祐君...君はやっぱり...誠実な男だな。
「そうだな...私のことは気にせずに、自分の気持ちを話すと良い。」
「人は...恋をすれば...この人に触れたい、一つになってみたいと思うのは至極当たり前のことだと思うんです。それは異性間であろうと、同性間であろうと何ら変わりありません...お身内の方に話すのは、とても抵抗がありますが...何度となく冬真君と一つになりたいと思いました。でも、こればかりは自分の意思だけではどうにもなりません。繊細な冬真君です...体と心と相談しなければなりません...まして、冬真君は体の傷痕を見られたくないと思っています。そんな状況の下で、彼を抱くのはルール違反です。だから俺は...冬真君がそうなりたいと願う日を待とうと思っています。」
「もし...冬真がそう言わなかったら...君はどうする?」
「俺も健全な男ですから、かなり辛い日々を送るんでしょうね。きっと...」
彼は寂しげに微笑んだ。
「なぁ葉祐君...?」
「はい...」
「君をそこまで駆り立てる物って...一体何なんだい?」
「俺にもよくわかりません。でも、俺達って隣り合ったパズルのピースみたいなんだと思うんです。」
「パズルのピース?」
「はい...一緒にいないと意味がないと言うか...俺...普通の恋愛して...結婚して...家族が出来て...それなりに幸せに暮らしていく自信は正直あります。でも...その家庭の主は、どうしても俺じゃなきゃいけないってワケでもない。でも...冬真君は違います。冬真君は俺じゃなきゃ...俺がいないとダメなんだと思うんです。俺がそばにいないと...また諦め続けて、『死』ばかりを見つめる人生の逆戻りです。冬真君のこと...俺だけが幸せに出来ると自負しています。それを自惚れと笑う人もいるだろうし、それを共依存だと言う人がいるかもしれません。でも、それは違うんです...俺達は一緒にいなくちゃ...二人で幸せにならないと何の意味もないんです...俺達は隣り合ったパズルのピースなんだから...何か...上手く言えなくてすみません...」
「そっか...葉祐君ありがとう。身内としても、医師としても非常に心強い言葉をもらったよ。こんな下世話なこと聞いて、本当にすまなかったね...許してくれよ。でも...さっき冬真が言ったんだ。『僕はセックス出来ますか?』って...」
「えっ?」
葉祐君は再度絶句した。
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