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First action #1 side Y

冬真のスマホの電話帳が4人増え、何日か経過した頃、天城医師から連絡があった。駆け落ち後のご両親の様子を知っている人が見つかったという。話によると、親父さんの遺品は織枝さんが管理していて、その中から葉書が二葉見つかり、その内の一人と連絡がついたという。天城医師はその人に事情を説明し、その人は、冬真に会い、当時のご両親の様子を話すことを快諾してくれたという。 「その人は土屋さんと仰るんだけど、冬真のことも覚えていたんだ!」   「えっ?」 「あぁ。冬真の名前を出したらね、『冬真君かぁ...懐かしいな。』って。」 「良かった!」 「それだけじゃなんだ!葉祐君!義兄さんは、どうやら塾の講師をしていたらしいんだが...当時のことを知っている人を出来る限り探してくださるそうだよ!」 「本当ですか?」 「あぁ!条件が整ったら、連絡をくださるそうだ。しかし...」 「しかし?」 「土屋さんのお住まいはS市なんだ...」 「随分遠いですね...」 「義兄さん夫妻は、北の地を目指したんだろう...」 「冬真の体を考えれば、短時間での行動は無理ですね...」 「そうなんだ。土屋さんに会えば、多少、心も不安定になるだろうし...予定を緩く組みたいのだが、葉祐君はそんなに会社、休めないだろう?」 「そうですね...今は有休を取れても1日ぐらいで、長期間はちょっと難しいですね...」 「私もそんなに長く診療所を空けることも出来ないし......冬真の心の安定には、君の存在が絶対不可欠だし...」 「う~ん............」 天城医師と俺は互いに黙り込んでしまった。俺は何気に、部屋のカレンダーに視線を移した。 「あっ!」 「どうした?」 「確か...冬真のカルチャーセンターの仕事は、月4回で、木曜日でしたね?」 「ああ。」 「来月、木曜は5回あります。来月4回のカルチャーセンターの仕事の翌日の金曜、先生と冬真がC空港から出発し、S市を目指します。俺は仕事が終わり次第、H空港から出発し、S市を目指します。土屋さんとは土曜日にお会いして、日曜日に先生はC空港に戻り、俺と冬真はH空港に戻って、冬真を俺の家にしばらく滞在させるのはどうでしょう?その週の金曜に有休取れば、木曜日、俺の仕事が終わり次第、二人で新幹線でN駅まで行きます。もうバスはないだろうから、N駅周辺で一泊します。」 「それじゃ......君が疲れるだろう?」 「土屋さんと会った直後、冬真を一人にするのは得策ではないと思うんです。そばにいれば、何かあっても、すぐに手を差しのべてやれますし...」 「葉祐君......君には頭が上がらないな。本当にありがとう。」 天城医師は神妙な声で言った。 天城医師はすぐに土屋さんに連絡し、俺のプランが採用された。 冬真を幸せにする... そのための具体的なアクションがいよいよ始まる... 俺は興奮を抑えることが出来なかった。

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