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First action #2 side Y

土屋さんとの約束の日、俺と冬真と天城医師の三人は、待ち合わせ場所に指定されたS市内のTホテルのラウンジで、土屋さんの到着を待っていた。 冬真は昨日、ほとんど眠れていない... 普段なら冬真を安心させることも、一向に効果がなかった。ストールをしても、髪を梳いてやっても強張った体は、更に強張っていくばかりだった。 俺は冬真にキスをした。少し開いた唇から、冬真の中へ入り、舌を絡ませる。俺の舌の愛撫に冬真は必死に応え、時折、冬真が漏らす吐息が俺を興奮させた。それと反比例するかのように、冬真の体の強張りは徐々に和らいでいった。 冬真から離れ、髪をもう一度梳いてやると、冬真は気持ち良さそうに瞳を閉じた。 「ねぇ...冬真?」 「うん...?」 「どうせ眠れないんだからさ...このまま朝までキスしてよっか?」 俺が冗談のような本音を言うと、 「また......葉祐は...突拍子もないことばかり言うんだから...」 瞳を閉じたまま、冬真は小さく笑った。表情が穏やかになり、いつもの美人がやっと誕生する。 「ダメ......?」 「そうだね......それも...悪くないかもね......」 もう一度、髪を梳いてやると、冬真は自ら俺の胸の中へ入り、ピタリと顔を付けた。 「ねぇ…葉祐...」 「うん...?」 「大丈夫...だよね...明日...本当は今日だけど...」 「うん。俺が付いてる...大丈夫だよ。」 「ふふ...何だか...すごい...自信......」 それだけ小さく呟くと、後から静かな寝息が聞こえて来た... 束の間の休息...今は全てを手放して眠るといい... ほんの数時間だけ眠り、俺達はここにいる... コーヒーを一口啜ると、背後から声が聞こえて来た。 「あの...天城さんでしょうか?」 振り返ると、50代位の男性一人とその後ろに、40代位の男性一人と女性一人が立っていた。天城医師が立ち上がり、 「土屋さんですか?」 「はい。」 「はじめまして、天城です。この度は私共の不躾なお願いを快諾して頂き、本当にありがとうございます。」 「土屋です。はじめまして。こちらこそ遠いところをありがとうございます。」 天城医師と土屋さんが互いに挨拶を交わし、俺達も挨拶をと、冬真と二人立ち上がり、振り返った。 「わぁ!里中先生だ!懐かしい!」 「本当だ!まるで生き写しだよ...」 「また会えた...そんな気分...」 「うん...皆も会いたかっただろうな...」 土屋さんの背後にいる男女二人が、驚愕の表情で続々と感嘆の声を上げた。 「冬真君...だね?」 土屋さんが尋ねた。 「はい......はじめまして...冬真です...」 冬真がお辞儀をすると、土屋さんは、後ろのふたりと目配せをし、 「私達はね、君とは『はじめまして』じゃないんだよ。まぁ...君と最後に会ったのは、君がヨチヨチ歩いている頃だけどね。」 そう言って、微笑んだ。男女二人も、頷きながら微笑んだ。

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