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First action #5 side Y

「僕は......望まれて...生まれて来たのでしょうか......?」 これは...ラウンジに戻って全員が揃い、話が再開した時に冬真が言った一言... そこにいた全員が冬真を見つめた。 「どうしてそんなこと思うんだい?」 土屋さんは諭すように冬真に尋ねた。 「僕には...父の記憶は...ありません...母も......母には...もう何年も会っていなくて...一つの記憶だけが鮮明に残っているだけで...ほとんど記憶がないんです...体が弱い僕は...皆の負担になってばかりで...迷惑ばかり掛けてきました...父も...母も...二人の叔母も...皆の人生を...僕は狂わせてしまいました...だから...僕.....生まれて来ない方が良かったって...いつも思ってて......でも...両親がほんの少しでも...僕のこと...愛してくれていたのなら...望まれて生まれて来たのなら...これから先...僕も幸せになっても...良いのかなって......」 冬真はそれだけ言うと俯いてしまった。 「そうか...私はもっと早く君に会うべきだったね...早く来れなくてごめんね...」 「.......」 「冬真君?」 「はい......」 「君はもう、何も背負わないで良いんだよ。心の荷物を下ろすんだ。君は自身の幸せを考えなさい。なぜなら、君はとても深くご両親に愛されていたのだから......」 「......」 「君はとても愛されていたよ。」 「本当...ですか...?」 「ああ。君がお母さんのお腹にいることが分かった時、里中君はそれはそれは喜んでね。講師陣全員に抱きついて、喜びを露にしたんだよ。まさに狂喜乱舞を表現したようで...普段、穏やかで冷静な男だったから、みんなびっくりしちゃってね。君が生まれてからは『冬真が何々が出来るようになった。』と毎日の様に報告してくれて...可愛くて可愛くて仕方がないといった感じだったよ。」 土屋さんさんがそう言うと、すかさず、根本さんも続けて言う。 「弥生姉さんもそうよ。冬真君、ベビーカーがあまり好きじゃなかったみたいでね。乗せるとすぐに泣いちゃうの。姉さんは『冬真は甘えん坊なの。』って、いつも笑顔であなたを抱っこしていたわ。私の母が『大変でしょ?』って聞くとね、『可愛いからいいの。』って...」 「笑顔の絶えない二人だったけど...里中君が一度だけ、涙を見せた日があったな...」 土屋さんが、思い出した様に呟いた。 「それは...いつですか?」 天城医師が尋ねた。 「冬真君に心疾患が見付かった時でした。『遺伝だったら...冬真に申し訳ない』と...泣いていましたね...」 「弥生姉さんもそうです...姉さんは、あまり母乳が出なかったみたいで...いつも私の母に相談していたんです。冬真君の病気は、母乳を飲ませてあげられない自分のせいだって...母の前でポロポロと泣き出したことがありました...」 やっぱり...冬真はとても愛されていたんだ... そう安心したのも束の間...隣から小さいながらも、浅い呼吸音が再び聞こえて来た。冬真を見れば、今度は顔色が悪い... 「天城先生!」 俺の声色で察知したのか、天城医師は冬真を一瞥して、 「皆様、こちらからお願いしておいて大変恐縮ですが、ここから先は、私一人がお話を聞く形になってもよろしいでしょうか?」 「ええ。もちろんです。」   土屋さんは快諾し、他の二人は頷いた。 「すみません...」 俺は一礼して、冬真の体を支える様に立たせ、歩き出そうとした瞬間、 「冬真君!」 土屋さんが呼び止めた。 「冬真君、聞きたいことがあれば、いつでも連絡をください。私はいつでも待っているよ。忘れないで...君は愛されていたよ。君は十分に苦しんだ...これからは、何も考えずに幸せになりなさい。」 冬真は頭を下げるのが精一杯だった。 「ありがとうございます。その時は、よろしくお願い致します。」 冬真の代わりに、俺はそう挨拶をし、その場から立ち去った。

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