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意外な一言 side Y
「忘れ物は...?大丈夫...?」
「うん。大丈夫。」
「何か...食べたい物ある?晩ごはん...」
「いいよ。無理しなくて。体...キツいだろ?」
「...少しだけ......でも...大丈夫。」
「いいよ、いいよ。今日はゆっくり寝てろよ。なっ?あっ!そうだ!今日は寿司でも食べに行く?お前、高級寿司店は行ったことあっても、回転寿司は行ったことないだろ?」
「行ったことはないけど...テレビで観たことはあるよ...」
「じゃあ、晩ごはんは回転寿司にしようぜ。注文した寿司が新幹線で届いたりするんだぜ!」
「本当?」
「本当!楽しみにしてて!まぁ...俺の給料で食べさせてやれるのは...それぐらいで...本当に申し訳ないんだけど...」
「ううん...新幹線で届くお寿司...見たい......楽しみにしてる...」
「うん!...あっ...あとさ......」
「何...?」
「昨日は....ごめん......その...歯止めが効かなくて......」
「...ううん.........嬉しかったよ...」
「本当に?」
「......歯止めが効かないほど......夢中になってくれたんでしょ?俺のこと...」
「うん!うん!夢中も夢中!今すぐにでも抱きたいよ!」
「もぉ...バカ......早く行かないと...遅刻しちゃうよ...」
「じゃあ...行ってくる。今日は、何がなんでも早く帰ってくるから!」
「うん......」
「行ってきます!」
「気を付けて...」
俺は冬真にキスをして、離れがたくも家を出た。
そう......昨日......俺達はついに...ひとつになった......
昨日の昼過ぎ、俺達は天城医師と別れ、そのままS市を出発し、午後の早い便でH空港に向かい、夕方少し前に俺の家に着いた。
「狭い家だけど...どうぞ。」
そう言って、俺は玄関を開けた。俺の家に初めて来たはずの冬真が、
「ただいま......」
と言った。俺が驚いて冬真を見ると、
「葉祐の家ってことは...俺の家でもあるんでしょ?」
と小さく笑いながら言った。
その時の冬真の可愛らしさに、俺は胸がときめいていた。
疲れているだろうからと、途中で寄ったコンビニの麺と惣菜を晩飯に食した。その片付けをしていた時、冬真が意外な一言を言った。
「冬真。先に風呂入っちゃえよ!もう入れるからさ!」
俺がそう言うと、背中に何かがコツっと当たった。気になって視線を背後に送ってみると、冬真が自身の額を、俺の背中に当てているのが見えた。
「うん?どうした?疲れたか?」
「......あのさ...葉祐......」
「うん?」
「......一緒に......入ろう......風呂......」
「えっ?」
俺は驚き、冬真と向き合った。冬真は右手でシャツの合わせ辺りをぎゅっと握りしめていた。
「い...良いのか...?」
「......うん...先に......入ってて......」
「わ...分かった...」
俺は胸の高まりを抑え、二人分の風呂の準備をすると、先に浴室へ向かった。
自分の気が競っているのか、本当に時間が経過しているのか分からないほど、冬真はなかなか入って来なかった。浴室と脱衣所の間にある磨りガラス越しに脱衣所を見れば、冬真が俯いているシルエットが見えた。
「冬真...?」
「......うん...?」
「無理...しなくて...良いんだぞ...」
「...葉祐......」
「うん?」
「気持ち悪くても......嫌いに...ならないで......」
冬真は震える...小さな声で言った。
「バカ......」
俺はそっと磨りガラスを開けた。冬真は右腕で左胸を隠すように、俯きながら立っていた。
「おいで......」
俺は胸を隠している右手を離し、両手で冬真の両手を引き、浴室に招き入れた。冬真の肌は、まるで陶磁器のように白く艶やかで、本当に美しかった。それが故、背中にまで達している茶褐色の傷痕は、異彩を放っていた。
俯く冬真の顎を軽く持ち上げた。困惑したようにアンバーの瞳が、ふるふると震えながら俺を見つめていた。
「綺麗だよ...お前の何もかも.........お前の全てが...愛おしい......」
そう言って...俺は冬真にキスをした......
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