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訪問者 #5 side Y
「ただいまぁ~」
帰宅すると、玄関には見たこともない靴が二足。
えっ?冬真...冬真はどうした...
慌てて靴を脱いでいると、
「お帰り。」
リビングから思ってもみない人が顔を出した。
「母さん!」
「しーっ!静かに!よく寝てるから...」
「あっ...ごめん...それにしてもどうして?」
「お前...この間、連絡くれたでしょ?冬真君が家に来るって...それに...この前の相談事...電話やメールで済む話じゃないし...善は急げでね。今日来てみたの。」
「で...冬真は?具合が悪くなったの?」
「ごめんね...悪気はないのよ。お父さんが冬真君を見たら、感極まっちゃったみたいで...ちょっと不安にさせてしまったの。でも、大した事はないわ。安心させようと頭を撫でてあげたら、気持ち良さそうにスーっと眠りについてしまって......」
昨日、無理をさせた自覚がある分かなり慌てたが、寝室に入り、冬真の寝顔を見て安心した。ただでさえ、あどけない寝顔の冬真が、今まで見たことないぐらい、今の寝顔は本当に穏やかなものだったから…
親父が俺に気が付き、
「よっ!」
と言いながら、右手を上げた。
親父は今までの経緯と冬真を驚かせてしまったことを詫びた。
「ごめんな。驚かせるつもりは全くなかったんだけど...俺はさ...心のどこかで冬真君は大人になれないだろうなってずっと思ってたんだ。だけど...そんな冬真君がさ、大人になってるうえに、しかも、俺より背が高いんだぜ。俺...本当に嬉しくてさ......」
「そうね......私達...冬真君は大人になれないだろうって...ずっとずっと覚悟していたから......悪気はないんだよ...ごめんね。」
母さんも親父に続いて詫びた。
あぁ......両親は...両親なりにそれぞれ、冬真の行く末を案じていてくれたんだ。
ありがたい…
心の底からそう思った。
「ありがとう...本当に...ありがとうございます。」
恐らく、今までしたことがないぐらい、両親に最高の敬意の念を込めて頭を下げた。
だって......冬真の寝顔を見て分かったんだ。
親の愛は......別格なんだ......って。
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