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親愛 #2 side Y
起こすのは可哀想だと思ったが、夜に眠れなくなると困るので、冬真を起こし、約束通り回転寿司屋へと出掛けた。
当初の予定とは違い、2名追加されたけど。
「葉祐にご馳走してもらえるなんてね~お父さん!」
「まぁ...葉祐の稼ぎじゃ回転寿司が精一杯か...でも、せっかくだから、遠慮なく頂くか!」
なんて...追加の2名は、待ち時間に呑気な事を言っている。冬真は...と言えば、寿司を運ぶ新幹線に夢中で視線が左右に忙しい。
可愛い...なんて可愛いんだよ!!
思わず冬真の頭に手を運び、頭をくしゃくしゃと撫でた。冬真は振り返り、小さく、だけど...ニッコリと微笑んだ。
スゲー...スゲー綺麗!!
いつもより美人度がかなり増している。
その笑顔は反則ですよ...冬真さん......
その笑顔に見とれていると、横から視線を感じた。
マズい......今日はプラスアルファがいたんだっけ。
この状況をどう乗り切ろうかと思案していると、タイミング良く店員に呼ばれた。テーブル席に通され、新幹線がよく見えるように冬真をレーン側に座らせた。
食べる段階になっても、冬真は一向に手を出さない。行く道すがら、回転寿司のルールや食べ方などは説明したので、やり方が分からないとは考えにくい。
もしかして...食欲がないのか?
「どうした?食欲ないの?」
「...ううん...そうじゃないんだけど......」
俺達のやり取りを見ていた母さんが、
「葉祐。あのさ、席代わってくれない?」
「何で?」
「いいから、いいから。」
そう言って、半ば強引に席を交換させられた。
「冬真君。おばさんね、色々なネタをたくさん食べたいの。でもさ、1貫づつだとちょっとキツいのよ...良かったら、半貫づつ食べない?もちろん、色々食べたいから、冬真君の食べたいネタも遠慮なく言って!二人で相談しながら食べましょうよ!良い?」
「はい。」
「ヤッター!じゃあ...そうしましょう!」
最初は...
何だそれ...
と思っていた。
しかも、冬真のリクエストなんてありゃしない...
母さんのわがままに付き合わされてるだけだし...
だけど...
冬真はちょっと楽しそうで...
いつもより食の進みも良いように感じた...
俺達はしばらく食事と会話を楽しみ、そろそろ会計をという頃、母さんが言った。
「結構食べたわね~冬真君。」
「はい...」
「冬真君が助けてくれたおかげで、色々楽しめたわ!ありがとう!」
母さんの言葉に、冬真の表情がパアっと明るくなった。
「でもさ、あともう一つだけ食べられないかな?」
「一つだけなら...食べられそうです...」
「じゃあ...あのコーンがのった軍艦巻き食べようか?」
「えっ?」
「食べてみたかったんだよね?あれ。」
「どうして...?」
「女のカンよ!」
母さんは、うふふふと笑った。
帰り道、今度は親父が冬真を独占し、二人は少し先を歩いていた。冬真は微笑みながら、親父の話に耳を傾けていた。俺は母さんと並んで歩いた。
「母さん。」
「うん?」
「今日は来てくれてありがとう。冬真も楽しそうだし、食の進みも普段より随分と良かったよ。でも...あんなに食べられたのに、最初、何で手を出さなかったんだろ...遠慮しちゃったのかな?」
「冬真君はお坊っちゃまだからね…あの子が食べに行ってたお寿司屋さんって、高級なところばかりなんでしょ?」
「多分...」
「だったら、おまかせで出てくるか、お店側が配慮して何も言わずとも、冬真君の好きな物を出していたかで、注文したことがないんだと思うよ。だから戸惑っちゃったのね。」
「そうか...それなら好きな物を頼めば良いのに...」
「あの子は...それが出来ない子でしょ?」
「そうだね。でもさ、何でコーンの寿司...食べたいってわかたったの?」
「ああ。レーンに流れて来る時、何度かチラッと見ていたし、食べたいというより、何だろうって思ったんじゃないのかな?初めて見たんじゃない?」
「なるほどね...」
「ねぇ、葉祐?」
「うん?」
「冬真君の調子の良い時、たまには外食したらどうかな?お前があの子になるべく手作りの物を食べさせたいという気持ちも、あの子が外に出たがらないのもよく分かるよ。でもね、食の細い子ってね、食べることもさながら、食事の時間その物がキツかったりするの。だからね、少し気分を変えてあげることも大切よ。あとは、ちょっとだけ優越感を持たせてあげるのもね。」
「優越感?」
「うん。今日みたいに、食べてもらうじゃないけど...食べることを手伝ってもらうの。こちらの都合で、あなたに付き合ってもらうってことを強調するのがポイント!」
「あっ....だから...寿司...」
「うん。普段より結構食べたんでしょ?」
「うん...結構食べたし、何よりも楽しそうだった...」
「普段、食事に関しては、劣等感の塊なんですもの。そうやって少しづつ解放してあげると良いわね。だからね、外食はシェアしやすい物をチョイスするのもポイントよ!」
「詳しいね。」
「うふふふ...お前は違かったけど、お兄ちゃんは食が細かったからね...お兄ちゃんに食べさせるために、あの手この手と試行錯誤を繰り返したものよ。」
「何かさ......」
「うん?」
「親って...やっぱりスゲーな!」
「でしょ?参ったか!」
「...ごめんね...期待を裏切るような道を選んで......」
俺が真顔で言うと、母さんは少し寂しげに微笑んだ。
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お寿司の数え方...今は場所や年代によって様々違うようですが、ここではお寿司二つで一貫と表記させて頂きました。
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