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切望 #2 side T
「おばさん......どうして......?」
「葉祐から連絡もらってね。冬真が疲れてるみたいだから、帰って来るまでそばにいてやって欲しいって。具合が悪い時に、不慣れな場所で、一人だと不安になっちゃうだろうからって。」
「...おばさん...迷惑掛けて...ごめんなさい...」
「気にしないの!それより...もうすぐお昼なんだけど...ご飯はどう?食べられそう?葉祐が作ったお粥らしき食べ物があるけど...」
「らしき...物?」
「いうなれば、お粥とはちょっと違うけど...お粥を意識して作ったんだろうな...って面影はある食べ物。おばさん、さっきまでお出汁とっていたから、何とかリメイク出来るけど...」
「大丈夫......そのまま...食べる...」
「いいのよ...気にしなくて...」
「ううん...葉祐が作ってくれる料理は...俺にとっては...家庭の味だから...」
「そう......じゃあ...そのまま温めて来るわね。」
「ねぇ...おばさん...?」
「うん?」
「お母様も......おばさんみたいに...キッチンで...鼻歌...歌ったりしたのかな?」
「そうね......多分...したんじゃないかな。」
「そうだと良いな......」
「きっと、そうよ!沈んだ気持ちの時には、あまりキッチンには立ちたくないしね。可愛い盛りの冬真君と大好きなお父さんのご飯を作って...楽しかったと思うよ。」
「うん......」
「ねぇ...冬真君......」
「はい......」
「私達から見れば、冬真君のお母さんは悲しいのかも知れないけど、お母さん自身はまだその頃のままで、幸せの歌の中で生きているかもしれないよ。」
「えっ...?」
「お母さんの中では、今でも可愛い盛りの冬真君がそばにいて、元気だったお父さんの帰りをずっと待っているのかもしれない。それはそれで...とても幸せなんじゃないかな?それでも...病気だったとは言え、あなたに深い傷と苦しみを与えてしまったことは...お母さんの大罪になってしまうけど......」
「大罪......?」
「冬真君はお母さんに...そんな罪の意識持ち続けてもらいたい?そこまで恨んでる?」
「ううん......」
「そうだよね...冬真君だって、とっくに赦してる。だけど...記憶から拭いきれなくて...とても困ってる...」
「うん......」
「だったら...上手に付き合って行けばいいんじゃない?発作が出たらどうしようじゃなくて、怖いものは怖いし...仕方がないって思うの。今日だって、葉祐に悪いって思うんじゃなくて、熱が出たから、葉祐が冬真君が疲れてるって分かったんだって考えるの。もっと葉祐に委ねてごらん。葉祐は冬真君のことなら、全てを力に変えられると思うよ!おばさんもおじさんも、あの子をそんな柔には育ててないから...」
「おばさん......ありがとう......一つだけ...聞いてもいい?」
「何?」
「お願い......正直に言って......この前...おじさんが言ったこと...おばさんはどう思う...?」
「冬真君と一緒に暮らすって話?」
「うん......」
「そうなれたら、素敵だなとは思うけど......」
「それなら......おじさんが良いって言ったら...おばさんも明日...俺の家に来てもらっても良いですか?見せたい物があるんだ......」
勇気をふりしぼっておばさんに尋ねた。おばさんは......
「あら?何かしら?楽しみだわ!」
笑顔でそう言った。
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