83 / 258

切望 #3 side Y

熱...下がったかな...... 食事や水分は摂れているかな...... 母さんに遠慮してないと良いけど...... 今日一日、頭の中は冬真の事ばかり、時計を見れば、まだ昼前で... はぁ...... メールの返信を確認すると… 『まだ寝てる...』 の文字... 母さんの用件だけ伝えるメールには、もう慣れたつもりだったけど、こうして見ると何だか切ない... う~ん...... 俺の落ち着かない素振りに、斎藤が尋ねる。 「何だか今日は、スゲーソワソワしてんなぁ?そんなに家に帰るのが楽しみなのか?」 斎藤がニヤリと笑いながら言う。 「違うよ。冬真がさ今朝方、熱出したんだよ。不慣れな場所で一人にしちゃうから、一応、母親に付いていてもらってるんだけど、心配でさ...」 「マジか?何だよ!早く言えよ!今日はもう外回りはないんだろ?」 「うん。」 「残務整理だけなら、時間休の1~2時間はゲット出来るんじゃね?俺は明日回せるのばかりだから、手伝ってやるよ!」 「いいよ。そこまでしてもらうのは悪いし...」 「バカ!お前のためじゃねーよ!冬真君のために言ってんの!早く帰ってやれ!一人で心細いだろうからさ。」 「ありがとな。」 「気にすんな。」 「うん......あっ...あのさ......」 「おう!」 「何でお前まで冬真のこと、名前で呼んでるの?」 「葉祐...お前......」 「うん?」 「冬真君のことになると独占欲丸出しだな。でもまぁ...あれだけの美人なら仕方ないかっ!」 斎藤は再度、ニヤリと笑いながら言った。 斎藤の協力のおかげもあって、2時間の時間休をゲット出来た。もうすぐ社を出られそうという頃、短い着信音が鳴った。スマホを見れば、新着のメールが一件。それは母さんからで... 「えっ?母さん?冬真に何かあったの?」 焦りを抑えきれない指先でメールを開いて見ると... 『冬真君の熱が下がったので、二人で一足先に帰るわね。お父さんは明日の午後、冬真君ちに向かうって。お前はどうする?これから新幹線乗るから電源切るね。』 珍しく文章らしいメール送って来たと思ったら... 何だよ...二人で帰るって… 何だよ...親父も明日向かうって... それより、冬真の体調...... 大丈夫かな。無理してないと良いけど......

ともだちにシェアしよう!