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満を持して #1 side K (Kohsuke ~Y´ father )
「ごちそうさまでした...おばさん......朝ご飯......とても美味しかったです......でも...少ししか食べられなくて...ごめんなさい...」
「いいえ。気にしないで大丈夫よ!残さなかったもの。エライ!エライ!」
「ありがとう...こうして...最初から食べられそうな分...申請すれば良いんだね...残さずに全部食べられたのも、朝から焼き魚食べたのも...久し振りで...とても嬉しい......」
「そう。良かった!」
「俺...少し仕事します。アトリエにいますから...何かあったら...声掛けてください...」
「分かったわ。」
冬真は使った食器を洗うと、寂しそうな笑顔を残して、リビングから出て行った。
「お父さん!あの二人...何かあったのかしら?」
冬真がリビングを出てすぐ、食事中の俺に構うことなく、母さんが身を乗り出して尋ねる。
「う~ん......」
「昨日のホームパーティ中は普通にしてたけれど、冬真君の手首の痣、大丈夫かしら?一生懸命隠してるみたいだけど...」
「う~ん......」
「葉祐...朝ご飯本当に食べないつもりなのかしら?」
「う~ん......」
「ちょっと!お父さん!」
「うん?」
「ちゃんと聞いてるの?」
「聞いてるよ!」
「お父さんは心配じゃないの?私達、一足先に今日帰っちゃうのよ?あの二人...大丈夫かしら?葉祐はまだしも、冬真君はとても繊細な子だし......」
母さんは実の子の葉祐より、冬真の方をとても心配していた。
それは...母さんの中で、冬真が自分の子になった証拠!
イェーイ!
だけど......
ちっ!ちっ!ちっ!
今回は違うんだな...今回、フォローが必要なのは葉祐の方なんだぜ!
いよいよ俺の出番だぜ!
「よしっ!母さん!」
「何?」
「おむすびかサンドウィッチか、すぐ食べられるものを作ってくれ!葉祐に食べさせるからさ。」
「えっ...えぇ......」
「今回フォローが必要なのは、多分、葉祐の方だ!うん!俺が何とかしてみるよ!」
「本当に...大丈夫なんですか?」
母さんが疑いの目で見る。
「母さんは、俺にどうして欲しいの?」
「まぁ......取り敢えず作りますけどね......」
母さんはブツブツ言いながら、キッチンに入って行った。
リビングの隣にある和室に入ると、葉祐はこちらに背を向けて寝転がっていた。
「葉祐〜おむすび持って来たぞ!食べろよ!」
「いい。いらない......」
「どうした?珍しくヘコんでるのか?」
「......」
「ここは男同士、正直に言えよ?お前...冬真に...無理矢理しちゃったの?」
葉祐はガバッと起きて、驚愕の表情でこちらを見た。
「なっ...何で?」
「冬真は一生懸命隠してるけどさぁ...手首の痣と、昨日、お前達別々に寝ただろ?俺、冬真と一緒だったんだけどさ。昨日、偶然見たんだよ。ゴミ箱の中のシャツ。あれ、冬真が昨日、着ていたシャツだろう?それから何となく想像してさ。あっ、でも、心配するな!母さんは何も知らないから。」
「......無理矢理はしていない...でも...それに近いことはした.....俺......俺......」
葉祐は言葉を詰まらせながら、昨日の出来事とやり場のない今の気持ちを、ポツリポツリと話始めた。
ふんふん.....
へぇ~お前達、お互い大好きで、大切で、仕方ないんだな...
大したことねぇよ!不運にも空回ちゃっただけだ!
ここは男同士の領域......
満を持して、俺の出番だな!
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