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ブルーな金曜日 side Y
冬真は何か話し続けていたけど...
俺の耳には何の言葉も届かなかった。
それは...
衝撃の告白を受け止めきれずにいるから...
冬真に...俺以外に食事を共にする相手がいる。
しかも女性で...月イチペース。
これは浮気になるんだろうか?
当の本人は...
そんなこと微塵も感じていないような表情で話してるけど。
斎藤の顔と言葉が頭の中をグルグル回る。
『お前...冬真君のことになると独占欲丸出しだな!』
『そうだ!悪いか!あんだけの美人、恋人にしてみろ!お前だって独占欲全開だぜ!きっと!』
頭の中で反論する。
「聞いてる?葉祐?」
現実に戻って前を見ると、冬真が小首を傾げて俺を伺っていた。
「あっ?あ......聞いてる!聞いてる!」
って......ごめん。本当は聞いてない。
今更聞いてませんでしたなんて言えないし...
「ごめんね...勝手に......」
勝手に?何だろう?
「あ......とにかく...楽しみにしてるよ!金曜日...」
「うん......ありがとう......」
スゲー可愛く笑っちゃって。全く......
複雑だな......
だって......
金曜日、全然楽しみにしてないし......
あーぁ。金曜日すっ飛ばして土曜日になっちゃえば良いのに......
来てほしくない...
そう願ってもやって来ないワケがない検査当日の金曜日。俺は朝からかなりブルーだった。病院では予約を入れてたにも関わらず、かなり待たされた上に、検査自体もかなりの時間を要した。全ての検査を終え、出口に近い待合室のソファーに座る俺の前に立った冬真は、ちょっと疲れた顔をしていた。
「お疲れ!」
「うん......」
「どうだった?」
「うん...心臓は大丈夫。でも......」
冬真が伏し目がちになった。
「でも?どこか悪かったの?」
「ううん。貧血..…久々薬が処方されちゃった...」
「そっか......でもさ、薬飲めば良くなるんだから......」
「うん…この後、会計で終わりなんだけど...もう少し時間が掛かるし...葉祐はここで待ってて...」
「了解!」
冬真は少し疲れた笑顔を残し、会計の方に消えて行った。
月イチとは言え、これは冬真の体には相当キツいだろうなぁ......
やっぱり...ウィークデーの家事の分担、考えないとなぁ......
そんなことを考えながら、ソファーの背もたれに両腕を伸ばして置き、天を仰いだ。ほどなく、隣でドカっと音がした。驚いて隣を見ると、一人の女性が俺と同様、背もたれに両腕を伸ばし、天を仰いでいた。更に驚いたのは、その女性が呟いた言葉だった。
「あー太陽が眩しい...このままだと死ぬな!うん!確実に死ぬな!殺人の領域だろ!これは!」
俺はギョッとして、ついついその女性を見つめてしまった。
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