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衝撃 #3 side Y
俺と研究員女史はお互いに見つめ合う。
そして...
立ってみて分かったのだが、研究員女史はかなり背が低い。おおよそ30センチぐらい差があるのではなかろうか。
「あれ?どうして二人は…一緒にいるの?」
冬真が暢気に言う。
間違いない。
冬真が月イチで食事を共にする女性は...
この研究員女史だ。
研究員女史は、俺を怪訝な、探る様な表情で見つめていた。
「岩代さん...?」
冬真が研究員女史を呼んだ。
「あっ?あ......ごめん!」
「紹介するね......」
冬真が俺と並んで立ち、右手を添えて
「こちらは...海野葉祐さん...」
と紹介し、俺は頭を下げた。次に冬真は研究員女史の隣に立ち、左手を添えて研究員女史を紹介する。
「葉祐...こちらは...岩代さやかさん。中学・高校の同級生でね...俺が月イチで一緒に食事をしている人って...この人...」
研究員女史いや、岩代女史は頭を下げたかと思いきや、ガバっと頭を上げ、再度俺をじっと見つめた。
「よう...す...け......?」
「えっ?」
「ようすけ......あんた葉祐っていうの?」
「ええ...」
「えっ?えーっ!あんた、葉祐君?えーっ!」
俺の名前の何がこの人を興奮させるのか、全く分からなかったが、岩代女史は一人興奮していた。それを見た冬真も急に慌て出して、
「うわーっ。ダメー!」
と言いながら、岩代さんの口を手で塞いだ。岩代さんはモゴモゴ何か言っていたが、冬真は岩代女史に何か目配せをしていた。
何かバタバタなコントをしているみたいな二人。冬真があんな風にバタバタしながら、俺の口を手で塞いだことなんて一度もない。
嫉妬しちゃうだろ...
そのうち、岩代女史が苦しくなったのか、冬真の手を払い、「ぶっふぁー」と酸素を求めた。
「苦しいだろうが!」
「ごめん。さっ、ご飯食べに行こう...」
冬真は岩代女史に構うことなく、歩き始める。
「岩崎!お前、私を殺す気かぁ?」
「岩代さん...ここは病院。そんなこと言ったら...ダメでしょ?」
「ちぇっ。」
岩代女史が舌打ちをした後、俺に言う。
「全く...中学の頃はさ、岩崎はめちゃめちゃ可愛かったんだよ~いつからあんな生意気なヤツになったんだ?」
「へ~っ...制服姿の冬真も可愛いだろうな...」
岩代女史ではないが、心の声のつもりが、無意識に声が発せられていた。
「うん。めちゃめちゃ可愛かったよ...でも...制服姿を見たのは...6年間のうちで5~6回ぐらいしかなかったよ。」
「えっ?」
俺が絶句して岩代女史を見つめていると、今まで悪態をついていた表情とはうって変わって、真顔で俺を見ていた。その時、少し先を歩く冬真が、
「二人とも早く~」
と珍しく大きな声で言った。
「後で折を見て話すよ。葉祐君......」
真顔でそう言った後、
「うるさいな!全く!ランチは逃げねーよ!」
岩代さんはまた悪態をついた。
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