110 / 258

救世主からの電話 side Y

腕時計と同じく、サイドテーブルに置いたスマホから着信音が流れた。ディスプレイを見ると、そこには同期のあいつの名前。俺は小さく息を吐き、冬真を起こさぬ様、急いでタップした。 「もしもし。」 『よぉ!』 「何だよ?こんな時間に......」 『こんな時間じゃねーと掛けられないだろ?気を遣ったんだよ!分かる?お楽しみの真っ最中だったら、もっと洒落にならないだろ?』 「あほかっ!」 『冬真君......寝たのか?』 「ああ。」 『プレゼント...もらった?』 「何で知ってる?」 『相談されたからな...』 「そっか......」 『その腕時計もらって...葉祐...お前どう思う?』 「素直に嬉しいよ。冬真の想いがつまった物だし、離れていても、いつでも冬真を身近に感じることが出来るし......」 『冬真君の愛用の品をプレゼントしたらと提案したの...俺だからさ。安心したよ...お前が喜んで...』 「ああ......だけどさ......」 『だけど?』 「冬真が...この腕時計を買うまでの経緯がさ......」 『だよな......』 「俺......どうしてもっと早く冬真のこと...見つけてやらなかったんだろ。真剣に探してやらなかったんだろう。可哀想なことしたよ...毎日、心細い思いをしながらも、こんなに頑張っていたなんて...冬真の本当の気持ちを理解してやってさ...探して...手紙でも書いてあげれば良かったよ......」 『仕方ないさ。二人ともまだガキだったし、お前は冬真君は無事に手術を終え、初めて会った頃とは別の...楽しい人生送ってるって疑わなかっただろ?』 「うん......」 『だったら、後悔しても仕方ねえ!大事なのは今だろ?その腕時計...お前が今、もらってやることの方に意味があるんじゃないか?』 「そうだな......」 『ああ...それにしてもさ......冬真君...可愛いな......』 「何だよ!いきなり。」 『いや。今回色々話してみてさ、何て言うの?本当に純粋培養でさ...お前への想いが半端ねぇんだって、スゲー伝わって来たよ...』 「本当に?」 『ああ。冬真君にとって、お前は全てなんだよ。独占欲全開にして、あんまり困らせるなよ!』 「うるせーよ!」 『幸せにしてやれ!悲しませたら、俺、お前のこと許さないからな!フルボッコ確定な!』 「分かってる!この場で誓うよ!冬真を絶対に幸せにする!極力、悲しみや苦しみから遠ざけるように努力するよ!」 『おぅっ!俺の可愛い冬真君を頼んだぞ!』 「お前が言うな!俺の冬真だぞ!」 『ほぉら!また独占欲全開にしてきた!まぁ...あれだけ綺麗で可愛かったら...仕方ないけどな!』 「ちえっ。」 二人で大笑いした。俺の声が耳に入ったのか... 「う...ん...」 と、冬真が寝返りをうった。その時の寝顔のあどけなさと穏やかさに堪らなくなって、冬真の頬にキスを一つ落とした。 だけど...... この誓いは......この日から約半年後...守ることが出来なくなり...... 冬真の魂は......長いこと...さまようことになってしまう......

ともだちにシェアしよう!