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事件 #1 side Y
俺の誕生日の半年後、まもなく冬真の誕生日という頃、冬真は岩代さんから同窓会の誘いを受けた。正月のこの時期に何故?とは思ったが、正月の帰省でこちらに帰っている人が多く、通常より参加者が多いのだという。同級生とはいえど、ほとんど知らない人ばかりで、冬真は最初、参加を躊躇った。しかし、岩代さんの強引さには勝てず、冬真は渋々出席することにした。会場は西田さんが働いているMホテルで、俺はいざという時に備え、近所で待機していた。同窓会が始まって1時間が経った頃、冬真から連絡が入った。
『葉祐......』
「どうした?」
『もう......帰りたい。迎えに来て......』
「具合悪くなったのか......?」
『ううん......ちょっと......疲れた......』
「分かった。10分位で行けるから...ロビーで待ってて。」
『うん......』
ロビーで待っていても冬真は一向に姿を見せず、そろそろ連絡を入れようかと考え出した頃、ロビーが突然バタバタし始めた。
どうしたんだろう......
そう思った矢先、西田さんがロビーに現れた。
「葉祐君!」
「西田さん!一体何が......」
「葉祐君、落ち着いて聞いてくれ。冬真君が......今、救急車でN大病院へ運ばれた。」
「えっ?何で!?」
「心臓の発作のようだが......しかし...それ以外にも......暴行を受けた可能性があるんだ。もしかしたら...性的なものも...含んでいるかもしれない......」
「えっ......?」
「これから警察が来る予定だ。絹枝さんには私から連絡しておく。君は一刻も早く病院へ!」
「分かりました。」
俺は乱暴に頭を下げ、ホテルを後にした。
病院へ着くと、冬真は集中治療室に運ばれていて、法的に家族と認められていない俺は、冬真の様子を伺い知ることが出来なかった。待合室で座っていると、天城医師と絹枝さんが姿を現せた。
「葉祐君!」
「先生!絹枝さん!」
「冬真は?」
「集中治療室に入っていて......様子が全然分からないんです!」
俺がそう言うと、看護師が一人足早にやって来て、天城医師に声を掛けた。
「岩崎冬真さんのご家族の方ですね?」
「はい。」
「先生から説明があります。どうぞこちらへ。」
「分かりました。」
天城医師は、
『心配するな。』
と言わんばかりに俺の肩を叩いて、絹枝さんと共に別室に消えて行った......
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