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悩める冬真 #3 side T

どうしよう...... どうしたら...誰も傷付けないで済む? 妙案を思い付いたところで......僕に何ができる? きっかけは、ボランティア先の院内学級にいる、楓ちゃんという小一の女の子からもらった物だった。 『とうまおにいちゃん、だいすき。かえでより』 可愛らしい小さなラブレター。 返事を書いてあげたかったけど... まだ鉛筆を持つことは難しくて... だから...院内学級の先生にお願いして...パソコンを借りて...短い返事を書いたんだ... 『ありがとう。うれしいです。いわさきとうま』 楓ちゃんはとても喜んでくれて...ホッとひと安心。 それから...ボランティアに行く度にラブレターは増えていった。しばらくは、院内学級のみんなのからの可愛らしい物ばかりだった。 でも今は...大人の女性の強い想いものばかり... 想いが強すぎる分、勇気を振り絞ったんだろうなっていうのが解る。だから…傷付けないように断りたい... でも...鉛筆は持てないし...タブレットを使えば…どうしても音が周りに聞こえてしまう。個人的なことのために学級のパソコンを借りるワケにはいかないし...家のパソコンを使えば、葉祐が不審に思うだろう... 葉祐には知られたくない。 この手紙を見たら...きっと心配して...嫌な思いをするに違いない… そして...... とても苦しむだろう...... だって...もし...逆の立場なら苦しいもの... 葉祐を悲しませることだけはしたくない。 葉祐は僕の宝物。葉祐の笑顔が僕の原動力だから... 「どうした?不景気そうな顔してさっ。せっかく私が様子を見に来てやったのに!」 葉祐の迎えを待つ、病院のロータリーのベンチに座っていた僕の隣でドサッと音がしたと同時に、誰かが話し掛けて来た。俯いた顔を上げれば、視線の先には...病弱で面倒な自分を支え続けてくれた同級生の顔...... 僕は...咄嗟に、紙袋に沢山詰まったラブレターを彼女に渡して...この状況から逃げようとした... 『く』『る』『し』 『こ』『め』『ん』 『す』『る』『い』 『こ』『め』『ん』 タブレットを押して、岩代さんに気持ちを伝える。 苦しい、ごめん。 ずるくて...ごめん。 ずるくて...ごめんなさい...... でも...... どうしたらいいのか...分からないんだ...

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