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温泉旅行 #1 side Y

旅館に到着すると、女将さんが笑顔で出迎えてくれた。チェックインの手続きを済ませると、女将さんは冬真に車イスを差し出し、座る様に促した。そして、自ら部屋まで案内してくれる。その途中、簡単な館内案内、食事のこと、温泉の効能を説明してくれた。 「長旅お疲れになったでしょ?まずは温泉に入られたらいかがですか?テーマ別に5つある家族露天風呂は、空いていればどこに入られても結構です。その際は、使用中の札と鍵を忘れずにね。脱衣所まで車イスで行って構いません。洗い場にも洗いやすいよう、少し高さのある風呂椅子もご準備しております。困ったことがありましたら、なんなりとお申し付けください。ゆっくり寛いでくださいね。」 部屋の鍵を開けながら、女将さんはそう言った。三和土に車イスを置き、俺は冬真を抱き上げる。女将さんが襖を開けると、畳敷きの部屋に少し大きい、だけど少し背の低いシングルベッドが二つ並んで置いてあり、奥には一人がけのソファーが二つと、その間に小さなテーブル、その先の窓の向こうには、一面に広がる海が見えた。 冬真は声は出なかったものの、『うわぁ...』と唇を動かした。 「すげぇなぁ...冬真。」 冬真はこくんと頷いた。女将さんは、部屋に荷物を置くと、浴衣とタオルを差し出した。 「さぁ、ゆっくり汗を流して来てください。家族露天風呂からも海が一望できますよ。今日は良いお天気ですから、綺麗な夕焼けや星空が見えると思います。その時間にも是非入ってみてくださいね。」 温泉に浸かりながら、海を見ている冬真。 車中で最後に海を見た記憶が曖昧なのだと教えてくれた。少なくとも手術後は行ったことがないという。だからなのだろうか...冬真は海を堪能するかのように、さっきから静かに海を見つめている。俺は冬真の隣に移動し、二人並んで海を見つめた。 「海...気に入ったか?」 そう尋ねると、冬真は振り返って俺を見つめ、ゆっくり頷いた。冬真のアンバーの瞳は、更に透明度が増し、留まることを知らない美しさと色気に、俺はかなり動揺した。理性と欲望のせめぎ合いが始まりそうな予感がする。 俺の体...三日間耐えられるだろうか... そんな卑しい気持ちを払拭するように尋ねた。 「なぁ?冬真?明日、海に入ってみようか?」 冬真は驚いて俺を見る。 「もちろん泳がないよ。足を浸けてみるだけ。お前、海に入ったことないんだろ?海を体験してみよう。二人で一緒に...なっ?」 俺の言葉に冬真は微笑む...清らかに...芳しく... そして...俺は神に祈る... 神様... お願いします... 荒ぶる俺の息子を今すぐ鎮めてください...

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