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温泉旅行 #2 side Y

女将さんをはじめ、この旅館の皆さんの心配りは本当に細やかで、とてもありがたいものだった。 露天風呂の前の休憩所には、小さなチルドケースがあり、その中には、宿泊客にサービスで振る舞われる瓶詰めの牛乳がぎっしり入っていた。それに対して冬真用にと、プラスチック性のマグカップとストローが準備されていた。食事も冬真の分だけ、喉越しが滑らかなものが準備されていたり、一口で食べやすい様になっていたり、咀嚼がしやすい様に隠し包丁が入っていたりした。そのおかげで、食が細い冬真にしては、普段よりたくさん食べている。 「美味しい?」 そう尋ねると、冬真は小さく小首を傾げて、嬉しそうに微笑んだ。 随所随所で、冬真を気遣う配慮がなされていて、家よりかなり楽をさせてもらっている。そして何より、冬真がとてもリラックスしていて、旅館に着いてから、笑顔を見せる機会がとても多い。感謝の意をどうしても伝えたかった。配膳係の女性にその旨伝えると、女性は女将さんと板長さんを連れて来てくれた。俺は二人に料理が美味しかったこと、冬真への細やかな心配りへの感謝、食の細い冬真がいつも以上に食事を食べていること、こちらに着いてから冬真の笑顔が多くなったことを伝えた。 二人は謙遜しながらも、 『お二人がお喜びになることが、何よりの歓喜と励ましです。』 と言った。板長さんは、 『明日の朝食も腕によりを掛けますよ!楽しみにしていてくださいね!』 と言い、板場へ戻って行った。 そして、女将さんから食事が済んだら少し話をしないかと提案があった。もちろん、断る理由もないので俺達は了承した。 食後、女将さんに案内されたのは、三階にあるラウンジだった。席に着くと、瓶ビールとグラスが一つと、見た目はグラスだがプラスチックで出来たコップが出された。女将さんはグラスにビールを注ぎ、俺に差し出した。 「すみません...ありがとうございます。」 「いいえ。冬真君は...少しだけにしましょうね。」 女将さんは笑顔で言った。 えっ? どうして...... どうして...冬真の名前を知ってるの? 驚愕の表情の俺達に対し、女将さんは顔色一つ変えず、コップに半分だけビールを注ぎ、 「はい。どうぞ。冬真君。」 そう言いながら、コップを冬真に差し出した。

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